第4話残された家族と悪魔

俺は今一軒の屋敷の前にいる。町から少し離れたところに立つ立派な屋敷だ。ここは今背中に背負っている奴隷商人の屋敷である。門番がいたのでここの家主が倒れていたから連れてきたことを伝えると奥様に伝えると言って中に入っていったので待っているのだ。着いてからだいたい10分ぐらいたった時に20代後半ぐらいの女性と10歳ぐらいの女の子、60代ぐらいの男性が屋敷から走ってくるのが見えた。


「ハイン!」


「パパ!」


と駆け寄ってきたので地面に下ろすわけにもいかないので寝かせられるところを聞くと屋敷の中の寝室に案内された。一緒に来ていたのは医者だったらしくハインと呼ばれた奴隷商人を観てからゆっくり立ち上がり奥さんらしき人に死んでいますと言ってから部屋を出っていった。それを聞くと奥さんはハインの亡骸に近づき力を抜いて膝をつき大声で泣き始めた。一緒にいた子供は何が起きているか分からずにいる。


「ああーー!何で・・ヒグ、ハインがこんな目に!」


「ママどうしたの?パパは眠っているの?」


「!・・・パパはもう目覚めないのよ。・・遠いところに行ったの。」


「え!・・もう起きグス・・ないの?・・」


女の子が泣き出すと女性は静かに抱き一緒に泣き始めた。


それから少しして落ち着いたのか女性はこちらに顔を向けて


「ありがとう。ハインを連れてきてくれて。でも君は?」


「俺はマモル。その男が切られているのを見つけて開放した時にあんたと娘のことを聞いてここまで連れてきた。」


「そうだったのね。でも何でハインは切られたの?」


女性に聞かれたので奴隷商人の記憶から読み取った出来事を伝えた。すると、女性は悔しそうに手を握ると


「そう、だったのね。確かにハインは許されない事をしたのかもしれないけど殺されるほどなの!」


「パパ・・。」


「殺したやつが憎いか?復讐をしたいか?」


「ええ!憎い!!復讐がしたいわ!」


「分かった。なら俺に着いてこい。手伝ってやる。」


それを聞くと俺は女性と女の子、ハインの死体を魔法でさっきの馬車のところまで瞬間移動した。


そして、近くの地面に穴をあけハインを埋葬すると女性と女の子はその近くで泣き出したため落ち着くまで待つことにした。


(でも、どうするの?復讐の為に冒険者探すの?)


(いや、探さなくても孤児院にいるだろ。あと復讐も・・・いや何でもない。)


(何?どうしたの?)


(いや、何でもない。)


(なんだよ~。変なの。)


しばらくすると落ち着きを取り戻したため親子に名前を聞くと母親の方がアンリ、娘の方がカミラと答えた。このままだと自分の身は守れるが親子を守れるかどうか分からなかったため、護衛の為悪魔を召喚することにした。


「出でよ。デーモン、お前の力を俺に貸せ!」


呪文を唱えると魔法陣が浮かび上がりその中心に髪が青く非常に整った顔の女性悪魔が表れた。その悪魔は俺をみるとこちらに近寄ったかと思ったら膝をつき頭を下げた。


「わが主よ。私をお呼び頂きありがとうございます。全身全霊をかけて尽くしていくので宜しくお願いします。」


「俺を知っているのか?」


「はい。魔界から見ておりました。美しい魂に圧倒的な魔力。呼んで頂けたときは歓喜に震えました。」


「・・・そうか。お前名前は?」


「はい。ルサールカ。ルサとお呼びください。」


「分かった。ルサ。お前にはあの2人の親子を守ってもらいたい。出来るか?」


「はい。お任せください。私の命を懸けてお守りいたします。」


「そうか。頼む。」


「よろしくお願いします。ルサ様」


「よろしく、お姉ちゃん!」


「こら!お姉ちゃんなんて失礼でしょ。すみませんルサ様!」


「いいえ、いいですよ。アンリさんもルサと呼び捨てで呼んでください。」


「いいえ!それではルサさんと呼ばせていただきます。」


「はい。よろしくお願いします。」


アンリは最初怯えたように挨拶をしていたが話しているうちに落ち着いたのか、今では笑顔で話していた。でもまだ顔が少しこわばっているが。


(何でアンリはあんなにおびえているんだ?)


(えっ!知らないの!ルサールカっていったら昔1つの国を滅ぼしたって本に載っていたぐらいすごい悪魔なんだよ!)


(そ、そうなのか。確かに魔力はすごいが・・俺なら倒せるから大丈夫だな。)


(それはマモルがすごいからだよ。無詠唱もすごいけど悪魔召喚って確か世界でも数えるほどしかできないって、前本に書いてあったよ!)


(そうか。この世界のことはまだ知らないからな。)


(まったく。)


「それじゃあ、行くか。」


「どこにですか?」


「復讐したいんだろ。」


「場所分かるんですか?」


「ああ、近くに孤児院がある。そこにいるはずだ。」


「そこに・・」


アンリは場所を聞くと手を握り締めて何かを決意するように前を見ていた。これから行く孤児院にいる冒険者が何を思って奴隷商人を殺したのかそれを聞くために俺は孤児院に向けて足を踏み出した。


どんな答えが聞けるか分からないが正義の為なのか?


この世界には正義も悪もないというのに。

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