第81話 重なる声

「ここは……カラオケ?」


 巴さんと五和さんに連れてこられた場所。そこは、駅から少し離れたところにあるカラオケ。

 最近駅前にゲームセンターやネカフェとセットになった大型店が出来たことでそっちに客が取られてしまっているのか、あまり客の姿は見えない。


「ほらほらボーッとしてないで行くよ。海琴が待ってるんだから」


 そう言って巴さんはエレベーターのボタンを押す。


「ちょっ……待ってくれよ! なんで今更海琴さんに

 会わなきゃいけないんだよ!」

「あんた達はちゃんと話さないとダメ。アタシ前に言ったよね? その事実だけじゃなくて理由までちゃんと聞いてって。そりゃ海琴が嘘をついたのは悪いことだけどさ。でもそれも全部アンタが好きだからなんだよ。それなのに着信拒否までされてさ、海琴泣いてたんだから!全部を許せとは言わないけど、せめてちゃんと話だけは聞いてやってあげてよ。お願いだからさぁ……」


 巴さんはそう言いながら涙を流し、俺の手を強く握る。

 でもどうしろと? 話を聞こうとしたのに『ごめん』の一言で突き放された俺にをしろって言うんだ。


「ほら千歌、とりあえず落ち着いて〜? ね? 」

「わかってる。わかってるわよ」

「そっか。ならいいのだけど〜。あ、でもね? 日野くん。きよも千歌と同じ気持ちなの。だからきよからもお願い。みこちゃんとちゃんと話をして?」

「…………」


 そう言いながら五和さんは巴さんの流した涙をハンカチで拭いながら俺を見る。俺はただ、肯定も否定もせずに目を逸らした。

 逸らした先には巴さんに掴まれた俺の腕。振り払おうと思えば振り払えるのに、それをしない自分の女々しさに腹が立つ。無意識に何かを期待しているとでも? そんな今更……。


「ぐすっ……ほら、あの部屋よ。あそこに海琴がいるわ」


 そう言って巴さんが指さした先。廊下の奥の角の部屋。

 あそこに海琴さんが──


「に、逃げろぉ!」


 なんだ!?


 いきなり部屋から飛び出してくる男達。その部屋はたしかに海琴さんがいると言っていた部屋だ。


「やべぇよあの女! 怖い! ママより怖い!」

「クソがァ! おいそこどけ!」

「うわっ!」

「キャッ!」

「わっ!」


 男たちは俺達にぶつかりながらも廊下を走り去っていってしまった。


「な、なんなんだ?」


 男たちが走り去った方を見ながらいきなりのことに呆然としていると、突然声が聞こえた。聞きなれた、気の抜けそうな声が。


「あ、師匠」


 何故ここに彼女が?

 そう思いながら振り向いた先には──


「「「魔法少女???」」」


 あまりにも場違いな姿の時雨がいた。


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ご注文は以上でよろしいですか? セットで私はいかがですか? 憧れの人にそう言われて付き合ったら幼馴染が闇堕ちして先輩がデレた。 あゆう @kujiayuu

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