第80.5話 そこに現れし者
乃々華は杏太郎が海琴の友達である二人に連れていかれてしばらく経った頃、スマホを取り出してとある人物に電話をかける。
『はい』
「あ、海琴ちゃん?乃々華だよ〜」
乃々華が電話をかけた相手は海琴。
『ねぇ乃々華ちゃん、私やっぱり……』
「聞いて聞いて! 大成功だよ〜! 海琴ちゃんがお願いした二人がちゃんと来て杏太郎を海琴ちゃんがいるカラオケに連れてったから。あとは海琴ちゃんが上手くやればこれで復縁作戦成功だよ!」
海琴は電話に出るなり何かを言おうとしたが、そうはさせないと早口でまくし立てる乃々華に遮られてしまう。
『う、うん……。でも、ほんとに大丈夫なのかな? これで上手くいくのかな?』
「大丈夫大丈夫! それに、お友達の分も呼んでおいたからね」
『え? それってどういう……ひやっ! え? え? 誰ですか!?』
電話の向こうで慌てるような海琴の声を聞くと、乃々華は思わず口角があがってしまいそうなるのを手で隠した。誰に見られる訳でもないというのに……。
(あはっ! あはは♪ この子が知らない男達と一緒にいる姿を杏太郎が見たらもう決定的よね。これでもうおしまい。もしかしたらケンカになるかもしれないけど三人相手じゃ勝てる訳ないし、そこを私がそっと支えるの。そうすればきっともう私から離れなれない。あーもう最高!)
「海琴ちゃん大丈夫だよ〜。み〜んな乃々華の友達だから安心して?」
『乃々華ちゃん!? これどういうことなの? 話してた作戦とちが──え?』
そこで海琴の声は途切れた。
「ん? あれ? 海琴ちゃん?」
乃々華は何かおかしいと思って声をかけるも返事はなく、かわりに聞こえてきたのは何か争うような声と物音だった。
『いきなり来て誰だお前は!』
『あなた達に名乗る名などありません! 今こそ我が秘剣が輝く時! じゃなくて刻!』
『てめぇ!ちょっと顔が可愛いからって調子のんなよ!』
『可愛いのはこの世に生まれた時から知っています。とーう! 正義の一撃をくらいなさい! 秘技! 30センチ定規殺法、雲耀の連刃! 顎! 首!首!首!顎! 首! みぞおち〜!』
『ガッ! こひゅ! オェェェ……』
「ちょっと!? なにしてんの!?」
『奥義! シュトルムアビスストラ〜〜〜イクッ!』
『ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
『な、なんなんだよほんとによぉ! 女の子とカラオケするだけで報酬貰えるって話だったんじゃねぇのかよ! こんなんやってやれるか! ほらお前ら、逃げるぞ! この女格好も言ってることもやべぇ!』
「は? なに!? 何が起きてるのよ!?」
電話の向こうで何が起きてるのかわからない乃々華は、混乱しながら何度も何度も説明を求めた。
しかし、それに対して返事を返したのは海琴でも、自分が今回の件を依頼した男でもなく──
『魔法少女ラブリーノーブラキュートガール、タイムレイン。クルッとプルンッと華麗に推参♪』
30センチ定規を持った魔法少女だった。
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