第80話 誘拐
「フラれたのに仲直りしたいなんて思ってるわけないだろ。そんなことしなくていい。どうせお前が何か企んでるに決まってるんだ」
俺は乃々華から離れて歩き出す。学校まではあと少し。周りには生徒も増えてきたし、校舎の中に入ってしまえばこれ以上余計なことは言ってこないだろう。
だけど……次の一言で俺の足は止まってしまった。
「ゴメンナサイって返事が来たんでしょ?」
「……なんで知ってる」
「だから言ったじゃない。相談を受けたって。だから二人のことはぜ〜んぶ聞いたわ」
「…………」
「信じるかどうかは任せるけど、海琴ちゃんの方は別れたと思ってないみたいよ? だってキョウに送った『ゴメンナサイ』は、キョウが『話を聞きたい』って送ったことへの拒絶じゃなくて、嘘をついたことに対してのゴメンナサイだったんだもの。つまり別れてるって思ってるのはキョウだけなの」
そんな……いや、そんなはずは……! だってもしそうだとしたら……。
「でも大丈夫。キョウは全然気にしなくてもいいのよ? だって最初に嘘をついたのは海琴ちゃんなんだもの。だからキョウが勝手にフラれたって決めつけてしまうのも仕方がないことなの。だからキョウは悪くないわ。ね? そうでしょう?」
「俺は……悪く……ない?」
「当たり前じゃない。だからもう一度話し合って、本当の事を聞かないと。だからその為に約束してるの」
「……約束?」
「えぇそうよ。実は今日の放課後、とある場所で海琴ちゃんと待ち合わせしてるの。私もついて行ってあげるから行きましょ? ね?」
「そうか。そうだな……。ちゃんと、話さないと、ダメだよな……」
「そうよ。そしてちゃんと気持ちを伝えないと。もう、無理だってことを……」
優しく言ってくれる乃々華に頷きそうになった時、突然俺の腕は両側から引っ張られた。
「おわっ!」
「はーいそこまで。悪いけど日野君はアタシらが連れてくから」
「ごめんね〜。きよ達、貴女のことちょ〜っと信用出来ないんだよね〜」
俺の腕をがっしり掴んでそんなことを言うこの二人は確か……海琴さんの友達の巴さんと五和さんだ。
二人とも久鳴谷学園の制服を着ている。そりゃそうか。海琴さんの友達なんだから大学生なわけないもんな。でもなんでこの二人がここにいるんだ。
「なに? いきなり出てきて誰よ貴方達は。私の大切な人から離れてくれない?」
乃々華が巴さんと五和さんのことを睨みながら、俺も聞いた事のない低い声で聞いた。
「はぁ? 大切な人? ふざけんじゃないわよ。こっちはもう色々知ってんだから。海琴はすぐ人を信じちゃうから気付いてないみたいだけどね」
「みこちゃんと貴女が会ってたあの店、きよのママのお店なの〜。だからあの日、何を話してたか知ってるんだよね〜。ほんと良くあそこまで綺麗事を並べられるなぁ〜って感心しちゃったぁ」
「っ!?」
なんだ? なんの話しをしてるんだ?
「つーわけで日野君、ちょっと今からウチらに付き合ってもらうよ」
「え? あ、でも学校が……」
「問答無用だよ〜。断ったらきよの胸を触ったって大声だすよ〜?」
「なんで!?」
「ちょっと! キョウをどこに連れていく気──ひっ!」
連れていかれそうになる俺の腕を掴もうとした瞬間、巴さんが地面をバンッと踏みつけて乃々華に詰め寄る。
「アンタ、ちょっと黙ってな」
「〜〜〜〜っ!」
そして俺はそのまま二人に引きずられるかのように連れ去られ、着いた場所は──
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