まほうの遊園地

れなれな(水木レナ)

まほうの遊園地

 ある日、五年生になったミロクくんのもとに一通の手紙が届きました。

『魔法の遊園地ご招待。このチケットでなんにんでもタダでご入場出来ます。おりこうさんだけ来ていいよ』

 ミロクくんの顔にはぱあっと笑顔が広がりました。

「魔法だなんて、すっごく面白そう。」

 しかし、いつも一生懸命、お店でいそがしく働いているお父さんとお母さんが何と言うでしょうか。

 ミロクくんは、一人で遠くまで遊びに行くことは許されていません。

 それでも、一回だけでも遊園地というところに行ってみたい。

 一人じゃダメでも、お友達を誘って、大人に引率してもらえれば反対されないかもしれない、と思いました。

 ミロクくんはさっそくクラスメイトの高橋さんを誘いました。

 すぐに何人もの希望者が集まりました。

「大人のひとが一緒だと、いいんだけれど。」

「わたし、お父さんに言ってあげる。ミロクくんのお父さんお母さん、お店を休めないんでしょう。」

 高橋さんのお父さんが一緒に来てくれることになりました。

「高橋さんのお父様、本日はどうぞよろしくお願いいたします。」

 当日、高橋さんのお父さんは、長い髪をポニーテールにして、かっこいいオシャレなジャンパーを着ていて、気さくに挨拶をします。

「おう、で? その遊園地はどこにあるんだ?」

 送迎バスはなんだか、すすけた雰囲気。

 何だか思っていたのとは少し、違いました。

 遊園地の敷地には、つぎはぎのある動物の乗り物が、とぎれとぎれの音楽に合わせてのっそりと勝手に動き回っていました。

 メリーゴーランドもコーヒーカップも、誰も乗っていません。

 それもそのはず、乗り物はすべておんぼろ。

 ジェットコースターも観覧車も故障中でした。

 その時、物寂しい風の音が聞こえ、みんなは総毛立ちました。

『いらっしゃい。楽しんでいってね。』

 現れたのは宙に浮かぶ白い布おばけ。

 くりくりっとした黒い目と逆三角形の口が、マジックで描いてあります。

「だれだ、いたずらするのは?」

『ボクはおばけやしきの方から来ました。』

「なあんだ、おばけか……って、えっ? おばけっ?」

 見れば、おばけやしきだけは、今にもみんなをのみこんでしまいそうなほど、迫力満点。

『ボク、精一杯おどろかせるから来てほしい。』

 もじもじと言うその背中には、キラキラ光る魔法の羽根が見えています。

 ははあ、これはきっと妖精だ。

 みんなは思いました。

「せっかくだから入ってみようよ。」

『ほんとっ、やったぁあ!』

 おばけやしきに入ることになりました。

 それがすごく怖かった。

 墓場の周りに血のりのついているしゃれこうべがいくつもゴロゴロしており、近づくとどんどん火の玉やおばけが出てくる。

「わぁぁ! きゃー。」

 背筋がぞくぞくする怖さでした。

 でも真っ暗闇の中で子供たちが「あれー? おばけくんいないじゃない。どこー?」というたびに布おばけは『ここだよー。』と言って出てきます。

「ねえ、こわくなくなるからもっとこっそりとしていてよ。」

 ミロクくんも高橋さんもクスクス。

「こんなの初めて! それにみんなと一緒で楽しかった。」

『よかった。でももうじき閉園になるんだ。年々魔法を信じる人が来なくなってしまって。君たちが最後のお客さんかもしれない。』

「だったら、このおばけやしきを目玉にしたら? とっても面白かったもの。ね、ミロクくん。」

 高橋さんの言葉にミロクくんもうなずき、

「いい考えだ。ナイス! 高橋さん。」

『そっか……そっか……! 信じてくれるひとがいる限り、魔法は永遠だよ! おかげで元気がわいてきた! ありがとう。ありがとう……!』

 おばけくんは、なにか呪文を唱えました!

 と、見る間に遊園地がピカピカに大変身!

 そして、おばけくんは金色のチケットをくれました。

 そこにはこう書いてありました。

『いつでもきてね! 毎日でもいいよ。-魔法の遊園地-。』


 -了-

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