第19話 後日談 披露宴にて

 後日開かれたアレックス王太子主宰の私達の披露宴は、それはそれは豪華なものだった。


 王宮の大広間を貸し切りにして行われた披露宴には、アレックス王太子と婚約者のブレンダ嬢。それからあの時のお茶会メンバーの令嬢方。


 私の職場の通訳仲間に義姉クレアの職場の翻訳仲間。旦那のヘンリーの仕事仲間や我が国に来てから知り合った方々などなど、合計で百人近い人達が集まってくれて、私と旦那は恐縮しきりだった。


 もっとこじんまりとした披露宴になるはずだったのに...まぁ王太子主宰ってことならしょうがないのかな..


 私が諦観の境地に達している間も宴は続き、来賓の方々が次々と祝辞を述べてくれた。その中でも姪のキャロルとレイの拙い感謝とお祝いの言葉には感激して大号泣してしまった。そんな私の側で、ブレンダまでがもらい泣きしている。


 嬉しいんだけど、この後の見せ場に影響しない? 大丈夫かな? お化粧崩れちゃってるよ? 直して来た方がいいよ? まぁそれは私もなんだけどね。


 宴は更に続き、いよいよブレンダの見せ場がやって来た。ブレンダがステージに上がる。


『今、私は恋をしている。この胸のトキメキをどうかあなたに分かって欲しい...』


 そう、あのお茶会の時の詩を朗読するのだ。今回は旦那の母国語であるエイナ語で行う。ブレンダは頑張ってはいるけどエイナ語はまだまだ拙い。


 私は教え子の発表をハラハラしながら見守っている教師のような心境だった。ブレンダ! 頑張って! あんたは出来る子だよ!


『私はスケベでビッチな売女で淫乱な娼婦のように...』


「ブッホゥッ! ゲホッゲホッ!」


 私は口に含んでいたシャンパンを吹き出し盛大に噎せた...


「プハハハッ! いやいや最高! プハハハッ! ヒィヒィ! く、苦しい...ねぇねぇアビー、どうだった? どうだった? あの時を思い出さない? ねぇねぇ? プハハハッ!」


 また犯人はお前かい! しかもよりによって私の披露宴でなんてことしやがる! このお子ちゃま王太子がぁ!


「オホホホッ! 皆様、ちょぉっと失礼しますねぇ~ 今すぐ教育的指導が必要なようですので~ オホホホッ!......てめえ! いつまで笑ってやがんだぁ! とっととこっちに来いやぁ~!」


 そうして私は笑い転げているアレックス王太子と、またまた騙され何が起こったのか分からずポカンとしているブレンダの首根っこをひっ掴んで舞台裏に引っ張って行ったのだった...


 まだまだ私の受難の日々は終わらないようである...私とブレンダって言った方がいいのかな...


 さて、まずはお子ちゃま王太子の教育的指導を行いますか!


 覚悟しろよ!

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転生チートが言語マスターだったので、通訳として生きて行きます 真理亜 @maria-mina

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