第18話 大団円
あれから一ヶ月が経った。
我が国はディード王国との国交を断絶した。もう一人転生者のあの男は本国に強制送還となった。我が国で犯した犯罪を本国で裁かれるらしい。もう二度と合うこともないだろう。
ディード王国と繋がっていた王弟派の貴族達は、不正に賄賂を貰っていたことが判明し、軒並み爵位返上となった。その中にはクズ義兄も含まれている。あのクズは私に対する拉致監禁容疑で起訴されることになる。
養父母である前伯爵夫妻には申し訳ないが、息子が犯罪に手を染めていた以上、それは仕方ないことだろう。
そういう訳で私はただのアビーに8年振りに戻ったのだ。この方が気楽でいいなんて思っていたのだが、どうやらスキル持ちの私は貴族でいなければならないらしい。
爵位を継ぐ気はないか? と言われたが、全力で断った。女伯爵なんて無理無理! 務まりっこないって! だったら義姉のクレアにって話になったが、こちらも無理だと断ったとのこと。
「だったらいっそヘンリーに継がせればいいじゃん!」
アレックス王太子の鶴の一声で決定した。なぜ他国の大使が我が国の貴族位を継げるのか? それはヘンリー様が私にプロポーズしたからだ。しかも結婚後は我が国に骨を埋めたいと言ってくれたのだ。もちろん私は二つ返事でOKした。
◇◇◇
「アビーお姉ちゃん、この荷物は持って行かないの?」
「あぁ、それは置いていくから、良かったらレイが使って?」
「ありがとう~!」
という訳で、私は只今絶賛引っ越し中である。王宮のこの部屋はそのままクレアとキャロル親娘、そして新しく家族になったレイに住んで貰うことにした。
身寄りのないレイを、引き取り手が現れるまで我が家で面倒みていたら、すっかりキャロルが「お兄ちゃん!」と懐いてしまい、クレアも「一人も二人も大して変わらないわよね~」とのことで、レイと養子縁組したのだ。
たった一ヶ月足らずで、我が国の言葉を覚えてしまったレイ。元々賢い子だったのかも知れない。汚ない格好をしていた時は気付かなかったが、キレイに磨いてみたら結構な美少年に化けたのでビックリした。
◇◇◇
そして今日は私とヘンリーの結婚式が行われる。こじんまりとした身内だけの式にしたかったので、アレックス王太子と婚約者のブレンダは呼んでいない。
それを言ったらメチャクチャごねられたが、警備の問題もあるので勘弁して欲しいと言ったら渋々納得してくれた。ただし後日、王太子主宰の披露宴は開くからと厳命されたので、そちらは有り難く受けることにした。
式に参列するのはエイナ国からヘンリーの家族と友人数名。私の方は前伯爵夫妻とクレアにキャロル、レイだけである。
キャロルとレイを両脇に伴ってバージンロードを歩く。ヘンリーが祭壇の前でにこやかに笑って待っている。神父様が誓いの言葉を述べる。
「汝ヘンリーは、この女アビーを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「誓います」
「汝アビーは、この男ヘンリーを夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「誓います」
そして最後に二人揃って、
『『 誓います 』』
とエイナ語で宣誓した。
両国の言葉で宣誓することにより、私はこの言語マスターというスキルで幸せになったのだとアピールしたかったのだ。
そしてこれからは二人でもっともっと幸せになるんだ!
~ fin. ~
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