第17話 救出

 私は歯噛みしなからその男を睨み付ける。剣を持つのに慣れてないのか、手がプルプル震えている。これならイケるかも知れない? 


 私は挑発してみることにした。


「ねぇ、あなた、一体なにがしたいの? なんで何度も絡んでくるのよ? もしかして私に惚れちゃったぁ?」


「んな訳あるかぁ! 自惚れんじゃねぇ!」


「じゃあ一体なんなのよ?」


「お前目障りなんだよ! 言語マスターは俺一人でいいんだ! それを! お前ばっかり目立ちやがってぇ!」


「なあに? 嫉妬してんの? ちっぽけな男ねぇ」


「うるさい! うるさい! うるさ~い!」


 そろそろいいかな? かなり熱くなってる。転生者ならこのつまんない罠にも引っ掛かるかも知れない。


「あっ! 空飛ぶスーバーマン!」


「へっ!?」


 見事に引っ掛かった。一日に二度もこんなもん蹴りたくないけど、股間を蹴り上げる。


「ぐぴゅっ!」


 男が奇怪な声を発してその場に崩れ落ちる。そのまま泡を吹いて気絶してしまった。ざまぁ!


 その時、誰かが階段を駆け上がって来た。新手!? 私は身構える。


「アビーさん! 無事ですか!?」


「ヘンリー様!?」


「あぁ、良かった!」


 ヘンリー様が私を抱き締めてくれた。どうしてヘンリー様が? その疑問はヘンリー様の後ろからレイ君が現れたことで解消した。どうやらレイ君が駆け込んだ先は、エイナ王国の大使館だったようだ。


 ヘンリー様に抱き締められてちょっと恥ずかしいけど、レイ君にちゃんとお礼を言わないとね。


『レイ君、ありがとうね』


 レイ君はとても良い笑顔を浮かべていた。



◇◇◇



「この子が大使館に駆け込んで来た時は驚きました。言葉が通じないんで困っていたんですが、なんだか必死だということはだけは伝わりました。アビーさんが書いたこのメモが無かったら、こんなに早く駆け付けられなかったでしょうね」


 ヘンリー様が説明してくれている時、下の階から騒がしい音が聞こえて来た。私が警戒していると、


「あぁ、心配要りませんよ。アレックス王太子が近衛騎士団を率いてこの建物を制圧してるんです」


「殿下が来ているんですか!?」


「えぇ、私がすぐに連絡を入れましたから」


 ヘンリー様がそう言った時、その当人が現れた。


「アビー! 無事か!?」


 そう言って私を抱き締めた。


「はい! 大丈夫です! ご心配お掛けしました!」


 私はそう言いながらレイ君に向かってウインクして、


『ほらね? 王子様と友達だって言ったでしょ?』


『うん、本当だったんだね! お姉ちゃん!』

 

 レイ君は喜色満面でそう答えた。


 ふう...良かった...これで終わったね...



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