美しく年を重ねた老女の独白と、若かりしころの可憐な語り口に圧巻されます。時間の流れを見事に書き切っているのは、語りだけではありません。古きよき喫茶店の雰囲気や、あの頃ころならではの言葉が華を添えます。シワだらけのお婆ちゃんになっても、大切にしている思い出とは。作中のブルーノートの響きを確かめてください。
出だしは不思議なファンタジー、読み進めれば胸がときめく素敵なラブストーリーになっていき、惹き込まれていきます。作者様史上最高齢のヒロインの大切な思い出が、あたたかな気持ちにさせてくれます。
明子さんは霧深いプラットホームで列車を待っています。事故があってダイヤが乱れているとのこと。しかたないねえ、駅を出たところの喫茶店で列車を待つことに。そこに流れてきたのは、智昭さんが未完成で残していった曲。今頃明子さんはどうしているかな、孫がいたりするくらいか。
同じあらすじから物語を作る筆致企画。おそらくこの主人公は企画内最高齢です(まだ継続中のため断言出来ない)。そこで立ち寄ったカフェで流れていた音楽につられて、彼女は自分の人生を振り返ります。さあそこの貴方。貴方も一緒に彼女の人生を追いかけてみませんか? きっと素晴らしい宝物が見つかりますよ!
この作品は、ゆあんさまの自主企画、「筆致は物語を超えるか」【初夏色ブルーノート】参加作なんです。この自主企画で読ませていただく作品。どれも素晴らしいのです。私も時間ができ次第、書こうなんて思っていました。でもね、こんな素敵な作品を読んでしまうと、もう衿を正すしかなくて、軽い気持ちじゃ書けないな。明子さんの一生。胸に響きました。すばらしい作品で、後味もよくて、どうかお読みください。
おばあさん視点とは変わってます。さらに変わってるのは……。意外な展開もあります。音楽の使い方も上手です。素敵なお話でした。
長い長い旅路のすえの物語。人生をまっとうし、自分の意思で乗り越えてきた女性の物語。読んで、よかった、と素直に思えました。そして、こんなお話が書きたいと、こんな人になりたいと思いました。物語の主軸である作者さまの「人間関係において迷惑上等」な哲学は他の作品でも度々見られて、ホントに好きなんですけど、まさしくそんなお話です。