「ほんと、計画通りすぎだね」
「じゃあ今日の部活はこれくらいね〜。みんなお疲れ様! 気をつけて帰るんだよ〜」
ガヤガヤとみんなが帰りの支度をする中、俺は頬杖をついてそれを見守っていた。本来なら部活が終わるや否、速攻家に帰っていた俺だが、今日残っているのには特別な理由があった。
「栄一くん、今日時間ある?」
「今日ですか?」
「そー。買い出しちゃおうと思って」
月イチの面倒い事。備品の買い出しだ。俺は少し遠くで備品の後片付けをし始めている栄一くんに声をかける。チラリ、と筆の確認をしている栄一くんはこちらを見ると「そんな時期ですか…」と声を漏らした。
すると。
「え! なになに! なんのイベントですか?!」
ほぉら。食いついた。
栄一くんの脇でチョロチョロと何をしていいか分からなかった優良ちゃんが反応した。栄一くんは少し面倒だな、みたいな表情をしたが俺的には計画通りだ。
「実は美術部の備品を買いに行かなくちゃいけなくて!」
「へぇ。備品ですか。それってセンパイ…長瀬センパイも行くんですか?」
「まぁそうだね〜。特に誰も行きたがらないから部長の俺か副部長の栄一くんが行く事になってるよ」
「へぇ…。基本的に行くのは誰でもいいんですか?」
「そうだね。部員であれば誰でも大丈夫だよ」
さぁ。言ってくれ。もうカードは揃った。俺はゆっくりと口を開く優良ちゃんの事を見つめる。
「なら!」
「ん?」
「なら! 私も行きたいです」
ほら。部員なら誰でも大丈夫。加えて栄一くんが行くのなれば優良ちゃんが来るのは目に見えているだろう。栄一くんには悪いけど本当にこれが恋なのか、確かめさせてもらおう。
「いいよ〜。人数が多い方が荷物とか持ちやすいしね〜。ね! 栄一くん!」
僕は体を斜めに傾けて頭を抱える栄一くんに声をかける。ここで「だめ」と言われてしまえばそれまでだが、きっと彼の事だ。
「…分かりました」
やっぱり了承してくれると思っていたよ。俺は少し性格が悪いな、なんて自覚しながら笑う。
「ん。どうせなら少し遠出しようか」
「遠出ですか! やった! カフェとか行きましょ!」
「おっ。いいねぇ〜」
「おふたりとも。遊びではないんですよ」
ワイワイきゃあきゃあと盛り上がる俺らを割って入ってくる栄一くん。栄一くんからしたら面倒な事になりかねないからきっと嫌なのだろう。
しかし俺としては願ってもない事だ。長くいれば長くいるだけ優良ちゃんの事が知れる。
「いーじゃん。少しだけだよ、少しだけ」
俺はニコッと笑いながら栄一くんの方を見つめた。
「………分かりました」
「やったね、優良ちゃん」
「はいっ!」
【番外編】ほんと、俺最初から不利だよね〜 ひよこ🐣 @hiyokokoko
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