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電話。
「はい」
『あっもしもし。あなたの奥さんです』
「死体が喋るなよ」
『あらやだ。戸籍新しく作ってんだから。待ってよ。事務的な手続きが大変なのよこれ。電話できるのも特例なんだから』
「特例?」
『X'masプレゼントだってさ。仕事場の』
「そうか」
『あんまり驚いた感じじゃないのね。残念』
「感情がなかった」
『あっわかる』
「おまえが死んだってニュースでやっててさ。悲しむ気も起きなかった。何も。感情が湧かなかった。無だな」
『無だね』
「生きてんのか?」
『仕事の関係で死なないといけないのよ。書類的に。言わなかったっけ?』
「言ってないよ。おまえ、だいたい、何か途中で言うのやめて、俺の背中さわりはじめるじゃん」
『背中をなぞって伝えてるのよ』
「何をだよ」
『感情?』
「感情ね」
『奥さんは戸籍作成にあと数週間かかるので。気長に待ってなさい。ええと、その』
「はい。分かりました」
『おとうさん?』
「おとうさんは違うだろ」
『えっなんて呼べばいいの。分かんないんだけど』
「あなたって呼んだら?」
『えっやだ。あなたは違うでしょ』
「
『それはあなたの本名じゃないの。やたらと重厚な名前しやがって』
「名字は変わるけどな」
『あっわたしの名字にするんだ?』
「どうも
『うわ凄い重厚な名前。へヴィアーマーじゃん』
「うん」
『あっ。X'masプレゼント。なんかよくわかんないけどプラモデル買っといたから。そろそろ届くと思うよ?』
「へヴィアーマー?」
『わかんない。なんか高そうなやつ』
「そうか。プレゼントはわたしですとか言われると思った」
『プレゼントじゃないでしょわたしは。わたしはね。わたし。あなたの一部』
「へヴィアーマーじゃん」
『違うわよ。誰がへヴィじゃ』
「呼び方。決めとけよ。次逢うまでにさ」
『うん』
「死ぬなよ」
『死なないわよ。暇なのよ外に出れなくて』
「だから長電話か」
『一回きりなの。これが終わったら戸籍できあがるまでまたひとりでぼうっとしてないといけないの。だから』
「なにか言うことは?」
『すき、です』
「えっ」
『えっ』
「いやいきなり言うから。びっくりしたなあ」
『感情あるね?』
「あるわ。生きてるわおまえと違って」
『ごめんね。直接伝えられなくて』
「ほんとだよ。そういう破壊力のある一言はさ。直接言わないと」
『うん』
「あっ。届け物きた。電話きるぞ」
『待っ、て』
「なんですか?」
『あなた。すき、です』
「片言だな。宇宙人か?」
『なにをっ』
電話を切った。
深呼吸して、涙を拭って。
さて。
彼女からのX'masプレゼントを受け取らないと。
X'masの奇跡 (折れたヒールとへヴィアーマー) 春嵐 @aiot3110
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