重厚な世界設定の量と圧にもみくちゃにされる快感

 連続殺人犯のヤバげな男が、おかしな格好をした電波な女と出会い、壮大な運命の奔流に巻き込まれてゆく物語。
 現代ファンタジーです。ごく普通の現代日本が、でも実は異世界と繋がっていたことを知る感じのファンタジー。壮大な、というのは本当に文字通りの意味で、とにかく緻密に組み上げられた設定の量とその細やかさがすごい。まるまるひとつの世界が出来上がってしまっている……?!
 あまり具体的に触れてしまうとネタバレになるので控えますが、とにかくツボの押さえっぷりがすごい。
 おおよそ作品紹介の欄にある通りで、思春期の頃に食らっていたらまず間違いなく、普通にかぶれてしまっていたタイプのお話です。三つ子の魂なんとやら、あの頃の自分がむくむくと起き上がってきて、「そう、こういうのだよ! こういうの!」と無限に盛り上がる感じ。ホントこういうのに弱いの! たまらん!
 どちらかといえば少女漫画的な世界だと思うのですが、物語の視点が男性の蓮村くんにあるのが好き。何がいいってこの視点のおかげで、ヒロインのアニヤさんの可愛らしい魅力がきっちり描かれているところ。あと単純に蓮村くんのちょっとささくれた性格も好きですし、そして忘れちゃいけないのが「なんか強い謎のジジイ」の存在!
 とにかく栄養満点な、読み応えのある極太のエンタメ系ファンタジーでした。