エピローグ
7-1
10月31日――
俺とエルは、とある駅の構内にきていた。
エルに出会うまでの経緯を話したついでに――つい昔話をしちまい。
そうしたら、ぜひ見てみたいと言われたからでもあり。
俺自身、過去の思い出に向き合ってみたいと思ったからでもある。
少なからず俺達と同じ目的で集まった人も居るみたいだ。
なにせサービス終了と言う名の命日みたいなもんだからな。
ある意味、記念日と言ってもいいかもしれない。
エターナル・フレンズとは全く関係のない、最近はやりのソーシャルゲームの広告をバックにスマホで写真を撮っている連中がそれなりに居た。
そうなのだ、この魔法少女物の広告が飾られている場所に、当時ラストダンジョンを攻略したギルド名が張り出されていたのだ。
やはり、特別な日だからなのだろう。オシャレな格好してる人とかもけっこういて。
中には、当時を思わせるキャラクターのコスプレをした人までも居る。
そんな中でも、フリルをたくさんあしらったキュートな子供服を着たエルは段違いに輝いていた。
きちんとしたシャンプーとかリンスで手入れされた髪は、とてもつややかで。
天使の輪もくっきりと見て取れる。
うん、マジで天使そのものといってもいい愛らしさだ!
『親バカ補正が入っているだけだろ?』
そう言いたい奴は言えばいい!
俺のエルは、世界で一番、可愛いのだ!
服の値段は、ちょっと高かったが、今後もエロイゲームとか買わないでエルを着飾っていく予定だ。
藤江さんも、ひ孫が出来たみたいだと言って喜んで養子として迎え入れてくれたし。
つまり、今のエルは、三星エルという名前になっている。
「パパ?」
「なんだエル?」
「パパが所属していたギルドの人も来てるのでしょうか?」
「どうだろうな? 来てるかもしれないが、目印とかあるわけじゃないからなぁ」
まぁ、普通に考えて無理ゲーだろ。
サービス終了した当初に看板でも掲げていれば出会えたかもしれないが……
「でも、超小型無線電話の関係者いませんかって! 声を上げて見れば分かるかもしれないです」
「う~~~ん」
気持ちは分からなくもないが、正直……恥ずかしい。
というか、すでにエルの良く通る声に反応して、俺達をチラチラと見ている人達が居る。
おそらく俺の代わりにエルが声を上げてくれたってことだろう。
俺の心情を察して行動してくれるとか、実に良くできた娘である。
「こうちゃん! 容疑者発見!」
どこの誰だか分からない女性が声を張り上げると――
何事かと思い、周りに居た連中が、俺達に注目しだす。
その声を上げた黒縁眼鏡をかけたおばさんに、とつじょ腕をとられた。
というか、腕に抱き着かれているので、むにゅっとした柔らかい物が押し当てられていると言った方が的確かもしれない。
実に良いふくらみをお持ちのかたである。
その女性は、ベレー帽をかぶっていて――髪は後ろの方で二つにまとめられ三つ編みになっている。
スケッチブックを持ってるから、絵をたしなむ人なのかもしれない。
そして、やたらと体格のいいおっさんが近づいて来た。
まるでラグビーかなにかやってるみたいな雰囲気がある。
「ちなみに俺、オリンピック出場選手の候補になった事もあるから、下手に逃げようとか考えない方がいいぜ」
「や、ひ弱な高校生に向かって言うセリフじゃねぇだろ、それ!」
「相場勇気……」
「えっ!」
「その顔は、自覚アリって事でいいんだな?」
――っ!
俺は、とある可能性に気付いてしまった。
「もしかして、お前……佐藤幸平なのか?」
「相場~!」
思いっきり抱きしめられた!
息ができないっていうか、マジで死ぬ!
「はいはい、こうちゃん、そのくらいにしておきなさい。じゃないと相場くん昇天しちゃうから」
「おっと、わりいわりい」
以前と変わらないさわやかな笑みに、怒る気もうせてしまう。
「って、ことは、あんたが如月瑞樹なのか?」
「いいえ。今は、佐藤瑞樹よ」
「そうか、おめでとう。二人とも結婚できたんだな!」
「えぇ、全て、貴方のおかげよ」
「や、俺なんて大した事してねぇだろ?」
「今こうして私達は再会できた。これ以上何を望むと言うのかしら?」
「パパ。この人達が、仲間だった人達なのですか?」
「あぁ、そうだ」
「「パパ~!?」」
佐藤夫妻の声が重なる。
相変わらず仲が良さそうでなによりだ。
「あ、いや、詳しく話すとかなり長い話になるんだが……いいか?」
「えぇ、もちろんかまわないわ」
そう言って瑞樹はスマホを見せてきた。
「先ずは、あの日出来なかった携帯番号の交換をしましょう」
「そうだな」
と、言って幸平もスマホをズボンのポケットから取り出す。
「へー。
「あぁ、二人とも改めてよろしく」
俺が右手を差し出すと、瑞樹がやんわりと受け止めてくれて。
「えぇ。こちらこそ、よろしく」
その上から被せるように幸平が両手でがっちりとつかむ。
「あぁ、よろしくたのむ」
それを見たエルが拍手をすると、久しぶりの再会を祝う拍手があちらこちらから聞こえてきた。
さすがは、エターナル・フレンズを最後まで愛した人達といったところであろう。
例え世代が違っても、出会いの形が異質でも、俺達の友情に変わりはないのだから――
おしまい
エロゲーの主人公になってみたい人生だった【10000PV感謝なのです✨】 日々菜 夕 @nekoya2021
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます