6-6


 うわ~~~~~~~!


 俺は、頭を抱え、その場にうずくまった。 


 美月さんは、何も悪くない。ごくごく当たり前の事を言っているだけだ。

 悪いのは、全部……俺だ。


「ごめんな、エル。まだ、エルには早すぎる話なんだ」


 エルは首をかしげている。


「よく分かりませんが、分かりました」

「それから、美月さん。どうせその内に話が回ってくると思うから言っておくけど、エルは俺の娘として育てていく予定だから」

「そうなのですね……分かりました。では、今後はエル様と呼ばせて頂きます」

「あ、うん。なんか、色々と、突然で、ゴメン……」

「いえ、正直なところ驚いてはおりますが、私は矢白様専属の使用人ですので意向には沿いたいと存じます」 

「パパ。使用人って、どういう意味ですか?」

「この場合だと、俺達の身の回りの世話をしてくれる人って感じかな」


 エルは、またしても首をかしげる。


「パパ。私は、自分の事は、自分で出来るようになりたいと思うのです」

「あ、うん。そうだな。最低限の事は出来た方がいいもんな」

「はい。それにパパのお嫁さんになった時に困らないように、パパのお世話もしたいと思います」

「え?」

「うぇええええええええええ! や、矢白様、ど、どいう、こと、のの、なので、しょうか!?」


 美月さんは、うろたえている。もちろん俺もうろたえている。


 エルの、まっすぐな眼差しに対して、アレが嘘だったとか、とてもじゃないが言えない!

 かと言って、ごまかす言葉も思いつかない。


 これ、どうすりゃいいんだよ!

 たのむ! 誰でもいいから教えてくれ!


「あ、いや、その、……」

「や、矢白様は、年上の、それも巨乳好きでしたよね!?」

「パパ。きょにゅうって、なんですか?」

「その、なんだ……」


 ダメだ。

 ココで、ごまかしたところで意味はない。

 なにせエルは、自力で正解にたどりつくスペックを持っている。

 後でバレた時の方が、お互いにダメージがでかくなるだろう。


「巨乳ってのはな。特に胸が大きな人の事を言うんだ」

「パパ。私は、年下で胸も小さいのにパパのお嫁さんになれるのでしょうか?」


 泣きそうな顔してんじゃねぇ!


「いいんだよ! エルは特別だからいいんだ!」

「本当ですか! パパ!?」

「あ、あぁ、ほんとうだぞ!」


 空色の瞳をキラキラさせて喜んでいる。

 こんなに可愛い娘を泣かせるとかできるわけがない!


「や、矢白様! 本気ですか!?」

「あ、あぁ。ほ、本気ですけど、なにか、問題でも?」

「だって矢白様、ロリコンじゃないですよね!?」

「あぁ~、もう、このさい、目覚めたってことにしてくれ……」

「パパ。ろりこん、ってなんですか?」

「エルみたいな可愛い娘が大好きってことだよ!」

「本当ですか!」

「あぁ、本当だとも!」


 なんでこんなことに……

 心の底から叫びたかった。


 俺は、巨乳のお姉さんが大好きなんだー!


 エルが将来、相当の美人さんになるのは79番さんのおかげで良く分かる。

 でも、あの人の胸って、そんなに大きくなかったんだよなぁ。


 とほほ……


 身から出た錆とは、まさにこのことか。

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