妖魔の跋扈する現代で、「退魔師」として働くJKというと、一見ジャンプモノみたいな印象を受けますが、どちらかというと「シン・ゴジラ」を彷彿とさせる、実写映像的な読み味でした。突然現れた「現代最強の退魔師巫女美少女JK」というコンテンツに湧く世間、利用しようと近づく人々、そういう「現金さ」を、諧謔も交えて書いている作品です。
もともとの世界で男性であるというTS設定ゆえに、家父長的な圧制や凌辱、性的な目線みたいなものがさんさんと水琴に降りかかっていても、水琴の人格自体は依然として転生前に紐づいているので、本人がそこまで「自分事」として捉えていない。あくまで他人事といった風なので、こちらも「災難だな……」くらいで読み進められるというか、諒解できる、うまい設定だと思いました。(水琴がTS設定なしのただのJKだったらちょっと読み続けるのがキツかったかも)
時たま覗く転生者ゆえの知見、みたいなものが面白く、「推しの子」のアクアを思い出しました。
伏線の存在もびんびん感じているので、これからの展開に超期待しています。
物語の主人公となるのは現代世界から異能の存在する世界に転生してしまった蛇谷水琴。前世では男だったのに今世では退魔師の家系の女子に生まれてしまい、両親は鬼神との戦いで亡くなり、若くして蛇谷家の当主に。しかし、受け継いだ退魔師としての能力ははっきり言って微妙。そして高校入学後の最初の夏休み。水琴は家の周りに突如出現した異常な力を持つ妖魔『龍神』と遭遇してしまい、下僕にされて容赦なく三十日にわたって凌辱されてしまう……。
しかし、前世の影響か特殊な魂の構造をしていた水琴は、その凌辱に耐え、さらに規格外の龍神の力をその身に宿すことに。世間的には日本最強の退魔師で、妖魔との戦いでは圧倒的な力を見せるのに、龍神には一切逆らえないという力関係のギャップが強烈な本作品。人類最強になったはいいけれど、頼れる者も秘密を明かせる者もおらず、とにかくハードモードな水琴の人生。お話はまだ序盤といった感じで、今後他の退魔師とどう絡んでいくのか、この秘密を誰かに明かせる日は来るのか……先の展開が非常に気になる退魔アクションだ。
(「裏返る性別……TS作品特集」4選/文=柿崎 憲)