第2話
あれから、もう何年経っただろう…………。
はい、嘘でーす。まだまだ俺はベイビーでーす。ばぶぅ。
あれから数ヶ月、赤ちゃん脳に耐えられたのか、それとも何か秘められた力でも覚醒したのか。両親らしき二人の使った魔法(?)的なファンタジー現象を目の当たりにして、前世のトラウマを想起させる光景から、俺はギャン泣きした。
屋敷中が大騒ぎになったのだが、今では落ち着いたもんだ。何日か、二人とも俺から離れずにずっと傍に居てくれたなぁ。
ほんと、良い親を引き当てたよ、俺。
いや言い方って指摘されてもねぇ?だってそうとしか言えないしねぇ?
親は子を選べないけど、子も親を選べないのだし。
まあ、それはさておき。
近況報告でもしようか。あれから何ヵ月経ったのか、正確には覚えていない。なぜなら、あのトラウマ想起事件後の俺は、真面目に純粋な赤ちゃんとして過ごしていたからだ。
今みたいに精神が大人の状態ではなく、何かこう………精神が休眠している?とでも言えばいいのか。とにかく、俺自身の精神は微睡みのような状態にあって、身体の方に精神が引っ張られて正常な思考ができなかったのよ。
まあ、普通じゃない赤ちゃんの中身が普通の赤ちゃんになったってだけなんだけどね!
そのせいか記憶が曖昧だ。思い出そうとすると、どこかぼやけた光景が目に浮かび、どんな記憶なのか想像はつくが、正確に判断できないようになっていたのじゃ。
赤ちゃんって案外、忘れっぽいのね。
結構、重要そうな記憶もあったと思う。特に、ギャン泣き以降の俺や周囲の動向とか。
医者らしき人達がばんばんやってきて、代わる代わる俺を診察してるっていうのは分かったんだが……肝心の診察内容が分からん。
さっぱり分からん。皆目、検討もつかない。そりゃぁ、異世界だもんね。色々と魔法陣らしきものでも出るのかと思いきや、全く違う紋章が浮かび上がって、そこから広がるオーラが俺に浸透している…………ような光景。
曖昧な言い方しかできんが、本当に想像するしかないのよ。目が悪い人はメガネを外した視界を想像せい。
目がすこぶる良い人は曇りガラス越しに絵とかを覗いてみろ。あんな感じだ。
まあ、幸い異常は無かったのか。現在の俺は交代授乳タイムなモテ期に戻っている。両親も心配はしているようだが、医者らしき人達の事を信用しているのか、必要以上の干渉はあまりしてこなくなった。
…………ぶっちゃけ、少し寂しい。
一緒の部屋で眠るっていうのは、たまにママンとしてきたが、パパンと一緒に寝るのは本当に稀だからな。
揺り籠越しとはいえ、家族団欒の川の次で寝るのは結構……幸せだった。
俺の前世がどんなもんだったかは、今現在では殆ど覚えてない。たまに思い出らしきものと、豊富な知識だけが今の俺を形作っている。
欠けている訳じゃない。むしろ、余計なものが削ぎ落されたような、そんな気分だ。正直ありがたい。前世の記憶がしがらみになる事は、無いとは言い切れないからな。
この世界がどんな世界なのかもわからん以上、前世の知識を参考程度にしながら、この世界の社会に順応していこう。
幸いな事に、精神状態の時と身体で行動する時の俺は、かなり乖離している。
感覚的には並列思考とでも言えばいいか。俺自身の思考はそのままに、赤ちゃんとしての俺は純粋な赤ちゃんのまま行動できているし、感情表現ができているのだ。
便利だと思う。この並列思考みたいなものは、トラウマ想起事件の後から出来るようになったものだし。
それ以前は色々と赤ちゃんらしい行動を取れずに苦労したもんだ。
碌に身体を動かせなかったけどなぁ!!(ドヤァ)
何はともあれ、だ。今、俺は生きている。それも家族や従者らしき人達に愛されながら、だ。
これほど幸せな事は無いだろう。この幸せを嚙み締めながら、今を大切に赤ちゃんライフを堪能するとしよう。
むっ!?わいの体内時計がアラートを鳴らしている!
誰か!おっぱいちょうだい!!俺は腹減ったんじゃ!!
俺、赤ちゃんぞ?
定番の異世界転生で俺tueeeしたかったけど、めんどくさそうだから止めた にゃ者丸 @Nyashamaru2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。定番の異世界転生で俺tueeeしたかったけど、めんどくさそうだから止めたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます