第1話
おはよう。朝だ。
まんまのおっぱいを吸ってお腹いっぱいになって、眠くなったから寝て。
起きて、じたばたして。あやされて。ぱっぱとまんまとその他大勢のメイドやら執事やらに覗き込まれたり、だっこリレーされたり………ははっ、産まれたての赤ちゃんが一番のモテ期なんじゃね?
いやね、異世界転生系、赤ちゃんスタートの作品を見てるとさぁ。なんかいきなりハイハイしたり動き回ったりするやん?
しかも、めちゃくちゃ考えたりしてるやん?
あれ、嘘だと思う。つか、ぶっちゃけるわ。
赤ちゃんの体力、ゴミ。
まあ、赤ちゃんだし。ゴミは言い過ぎかもしれんな。けど、ほんっっっとに、赤ちゃんの身体って不便なのよ。
何せ筋肉と骨が出来上がって間もなく、更には内臓機能もそこまで発達してない。だから全部の行動に対する消費エネルギーが半端なくて、寝て食べて起きて動いての繰り返ししか出来ないのよ。
冗談抜きでな?
頭が柔らかいからか、目と耳と鼻と肌と、五感で感じた全ての情報の吸収量が半端ないけど………その吸収量に対する赤ちゃんの身体機能が追い付いてない。
スペックは高いと思うよ?だって、普通の赤ちゃんよりめちゃくちゃ早く成長出来てるし。
精神が大人に近い状態からスタートだからかな?わりと思考面での発達は身体より凄いと思う。
お蔭で回りの人が何をしゃべってんのか、ある程度の理解ができたと思う。
発音が英語に近いからかねぇ、言葉の繋ぎ方とか、身振り手振りを交えたものを見ているだけに、文法への理解度が早くて助かる。
赤ちゃんの頭がめっちゃ柔らかいからじゃな。うん。赤ちゃんの吸収力はスポンジなど足元にも及ばない吸収力じゃ。
あと、あれだ。なんか意味わからんのがあったのよ。日常生活でご飯の時間をおぎゃって伝えるとさ、直ぐ近くにいたメイドさんがしゅばって来て、胸元をめくってずらしておっぱいを飲ませてくれるのよ。
多分、乳母ってやつ。
でも数が尋常じゃねえ。まんまを含めたら十人くらいはおっぱいを飲んでるでぇ。赤ちゃんだから性欲ねえからさ。
もう、シュールにしか見えん。想像してみよう。日替わりで乳母が変わるんだぜ?
はっはっは、日本だったら狂気。いや、地球でも狂気か。
………あ、そういえばここが地球じゃないっぽい事は確かだと思うじぇ?
なんでって聞いて聞いて?
あのね、よく分からんのが見えたのよ。ぱっぱとまんまがブツブツ念仏唱えるみたいに何か言って、そしたら人に似た〝何か〟が霧が晴れるみたいに現れたのよ。
んで、俺に向かってぶわぁあああああって、蒼と白と緑の色合いの主張が強い虹色の光が襲い掛かったのよ。
ふふっ、ちびった。つか泣いた。マジで怖かったもん。いきなり視界いっぱいが光輝いて、津波に呑み込まれるのかと思ったもん。
俺、ちっちゃい頃に親に連れられてサーフィン行った時に、波に呑み込まれた時の経験が若干トラウマになってたからさ。
そりゃぁもう大泣きよ。まじで怖くて逃げたくて何して良いのか分からなくなって。寂しくて一人になって、また死ぬんじゃないかって焦ってさぁ。
頭ん中がぐちゃぐちゃになったよ。
そして家じゅう大騒ぎ。医者らしき白衣の人も呼んで、一晩中、俺をあやしてあやしてあやしまくりのあやし祭りよ。
結局、あれが何だったのかは分かってないけど。感覚的になんとなーく理解してる俺がいるのよね~。
魔法っちゅーか。魔術っちゅーか。限りなくそれに近い何かだと思う。
あの人に似た何かの正体はよく分かってないけど、イメージ的には精霊ポジかと思っとる。
………ははっ、ほんとに。俺ってどんな世界に転生したんだ?
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