ひたすらニヒルでペシミスティックなハードボイルド・ウェスタン!

 最後は必ず負ける〝自称・やられ役〟の男、カン・ジ・エンプティの活躍を描いた物語。
 ガンマン風の男が主人公の西部劇です。何がいいってもうとにかく格好いい! キャラクター設定が、とかアクションシーンが、というよりは、彼の言動から滲み出る生き様の、その濃さと生々しさが非常に魅力的でした。
 ストイックな男の美学というか、この匂い立つようなハードボイルド感!
 なにしろ主人公は「負ける」ことを己のアイデンティティとしているくらいで、それもレトリックとかの類ではなく、本当に説得力のある負けっぷりを見せてくれる……のですけれど、それが本当に格好いいのだからたまりません。
 展開も好きです。賭博に喧嘩、お嬢様の警護と襲いくる三下、巨漢の追っ手との戦いに、そして黒幕との邂逅と決着。おおよそ欲しいもの全部与えてくれる欲張りセット。おかげでとっぷり雰囲気に浸れる、ひたすら格好いい物語でした。この煤けた感じ! 最高!