「魚が見る夢」という詩

海の底に住む魚は夢の中で

二本脚でアスファルト路を歩き

腕で電車の吊革に掴まり

耳で降りしきる雨の音を聞き

口で愛の言葉を語る


短い睡眠時間の中で

魚は霊の長となり

歩き 掴み 言葉を解し

我が身に訪れる将来に夢を見る


見えた夢は

 ビルとなり

  法律となり

   哲学となり

  世を動かし

 地球を変え

宇宙に届く


そして魚が眠りから覚めると

数十億の人生は泡となって消える


という詩を電車の中で読んだ男は

あくびをして

揺られながら短い睡眠をとる

今日も何もなかったと家に着いた男が

玄関を開けると家には海水が満ちていて

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焦点を持たない詩篇 村乃枯草 @muranokarekusa

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