第5話 馬車での出会いと門兵の男
人界
人界では様々な国がありその中でも強大な力を持つ国は3つ。
クオルア王国 ヴァイクレ帝国 ネフィリム聖国
副官イルス・ロウリンスの潜入先はクオルア王国、王都に存在する
王立フィルヒル学園
平民、貴族関係なく試験を受け合格すれば入学できる。
軍に入隊するため、貴族の騎士になるため、自分の将来の伴侶を探すため
様々な思惑を持った若き者たちが集まる場所である。
・・・・・・・・
「さて、人界クオルア王国の王都が見えてきたな。」
整備された道をしばらくの間、歩き続けた。
これから潜入する国ついてや学園についての資料を歩きながら見ていると
後ろから自分に迫ってくる音が聞こえる。
何だ?と振り返るとすぐ近くに馬車がいた。
「どけ!クソガキ!」
馬車を運転する御者に手綱を急に引っ張られた馬が悲鳴を上げ止まった。
書類を見ながら歩いていて馬車に気付くのに遅れた俺は危うく轢かれるところだった。
あぶねー、潜入する前に死ぬところだった。
「すいません!書類を見ていて気づきませんでした!」
やばい潜入する前に問題を起こすわけにはいかない。
それに書類を見ていて気付かなった俺も悪い。
「お前、この馬車に乗る御方に万が一のことがあったらどうするきだ!」
激昂していて俺の謝罪の言葉が届いてないみたいだ。
御者の人はその後も怒りが収まらないのか?
それとも馬車を運転してストレスが溜まっているのか知らないが説教は続けられた。
いい加減終わらないかなと思っていると止まっていた馬車から同い年くらいの少女が降りてきた。
「いつまで止まっているのかしら?いつまでも馬車の中にいるのも飽きたところなのだけど。」
降りてきた少女は女神と言われても納得できるくらい整っていた。
切れ長の銀色の瞳を持ち鮮やかで美しい銀髪をなびかせ、衣服越しでも分かる艶めかしい肢体を持つ少女は俺と御者の近くまで来ると御者に向かって呆れた表情をして言葉を吐いた。
「先程から声は聞こえていたのだけど、あなたの説教なんてどうでもいいから早く馬車を出してちょうだい。」
少女の言葉を聞いた御者がどんどん顔が青ざめていった。
「すいませんっ、今すぐ出しますっ。」
「そこの黒髪の人も悪かったわね。」
「いえいえ、全然大丈夫です。」
少女が馬車の中に入ると御者が手綱を操りあっという間に離れていった。
今のが俺の人界での人との初交流とはこれから先、大丈夫だろうか。
それに今の少女はどこかの貴族か?
容姿もとても整っていたけど何よりも纏う雰囲気が御者の人とは違って迫力があった。
あんなのがたくさんいるとは考えたくはないが学園では極力、貴族に関わらないようにしよう。
そんなこと考えながら歩いていると巨大な門の前に出来た行列が見えてきた。
そこには商人もいれば冒険者など様々な人が並んでいた。
俺の第一関門はここだ。
人界での俺の設定は辺境の小さな村で生まれたことになってる。
両親は小さい頃に二人とも他界していて農民として暮らす日々だった。
そんなある日魔物に襲われた俺は魔法の力に目覚める。
そこから頑張って独学で魔法を磨き学園の試験に挑戦しに来たというどこかの物語の平凡主人公みたいな設定だ。
出来ていた行列は緩やかに進んでいき到頭、俺の順に回ってきた。
「今回はどのような目的でお越しですか?」
門兵の男が話しかけてきた。
それだけなのだが人界潜入の第一関門だ。体の震えが止まらないよ。
やばい、緊張してきた。
手汗まで出てきた。
「えっと、学園の試験を受けに来ました。」
声が裏返ってしまった。
冷や汗まで出てきた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。」
門兵の人が優しい笑みを浮かべて緊張を解そうとしていることは分かる。
俺も精一杯笑おうと頑張ったがちゃんと笑えているかな?
「君の身分を証明出来るものてあるかな?」
「あります、どうぞ。」
人界ではすべての人に身分を証明できるように身分石が配布されている。
だがそんなものを持っていない俺は今、何を渡したって言う疑問が出るよな。
そんな疑問に答えよう!
俺が渡したのは偽装スライムだ。この便利道具はあらゆる物に形状を変えることが可能できる。今回は身分石に形状変化している。
しかしこれは試験道具らしく身分石に形状変化したはいいが身分石の効果が発揮出来るかのテストはしていないらしい。
そんなもの渡すなよな。
門兵の男は身分石を円状のリングに通し始めた。
リングは発光してしばらくして収まった。
どうなんだ?時間の流れを遅く感じる。早く楽にしてよ。
「検査は終わりました。通って大丈夫ですよ。がんばれよ。」
門兵の男の人は親指を立てて通らせてくれた。
「ありがとうございます。」
心臓の鼓動が段々と正常に戻っていくのを感じる。よかったー、通れたよ。
門を通過するとそこには美しい外観を持った城を中心に栄える城下街。整備された街路に等間隔に配置された街灯らしい物。
何より活力あふれる人々で賑わっていた。
この光景を見渡し人界の王都にいることを実感する。
俺はこの光景に溶け込むことができているのだろうか?
いや溶け込むんだ。
イルスは気を引き締め歩き始めるのであった。
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