人工知能は「美味しい笑顔」の夢を見るか?

魔術の発生原理に科学的知見を持ってくる異世界ファンタジー作品は数多くありますが、登場人物の設定それ自体にSF的要素を持ってくるという点が珍しく映りました。
「汎用AIを搭載した自律型戦闘存在が、その身に持つ機能のいくつかを保持したまま異世界へ転生する」――この、SF好き、ファンタジー好きの両者が食いつくような設定を、しっかり「面白さ」に昇華させているのが良かったです。自分は安易な異世界転生モノやチートモノが苦手なのですが、タイトルに惹かれ、あっという間に最新話まで読み進めてしまいました。それはひとえに、どんなチートが描かれようが、どんなご都合主義が起ころうが、「人工知能が人間の心を学んでいく」という古典SFの王道をしっかりと描こうという意識に溢れているからです。たしかに物語の表層は、よくあるチートモノに近いかもしれませんが、しかしその根底に流れているのは古典SFへの敬意であるんじゃないかと感じ入りました。
だから私は、この物語が好きなのです。今後も応援しています。

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