終末の予定

 朝のニュースでは、何かの専門家がアナウンサーと決まりきった問答をしていた。多分、今日だけで3周は繰り返しているだろう。妙に神妙なアナウンサーと訳の分らない用語を話す専門家は、シュールなコントの様にしか見えなかった。結局、要約すると今週で世界は終わりってことらしい。

「ねぇ、週末どっか行かない? せっかくだしさ」

 彼女はのんきに提案して来た。今週は仕事も休みになって、せっかくと言えばせっかくだが。

「混んでるんじゃない? それにきっと、どこもやってないよ。俺たちだって休みな訳だし」

 コントに飽きたアナウンサーが、渋滞情報を喋り始める。


『各地域の主要な幹線道路は、軒並み渋滞が予想されます。皆さんどうか、不要不急の外出を避け、落ち着いて行動して下さい』


 必殺の決め台詞で、バッチリと釘を刺しに来る。2人の男に反抗され、彼女もどうしようもない。勢いよくテーブルに突っ伏し、可愛らしく遺憾の意を表現していた。

「後2日も休みが有るのに、何もしないのつまんないじゃん」

 僕は根っからの出不精だから、正直家でゴロゴロしていたい。

「じゃあさ、アメコミの映画全部見るってのは? 結構シリーズ有るし、前から見たいって言ってたじゃん」

 彼女はテーブルに突っ伏したままだったけど、ちょっとだけ機嫌を直したらしい。

「そしたら、ポップコーン沢山買って来て」

「良いけど、売って無かったら?」

 彼女は餌に食い付いた獲物を見て、意地悪に微笑んだ。

「生のトウモロコシでも良いよ、味付けはしてあげる」

 どうやら、拒否権は無いらしい。最後のお使いに行こうとしたとき、丁度、朝のニュースが終わる時間だった。スーツ姿のアナウンサーが、お別れの挨拶を告げる。


『今週もお別れの時間となりました。それでは皆さん、良い終末を』

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今日は死ぬのに丁度よい日 モリアミ @moriami

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