番外 Kikipediaより

「少年リュカ」


生没年不詳。

惑星ワニィに建てられた等身大の少年像。

リュカとは石像のモデルの少年の名前であると言われている。

ワニィ星の観光スポットとして有名であり

ここを訪れる観光客は多い。


王太子誘拐事件、更には同時に起きたノーデル星事件について、

当事者の多くが口をつぐみ、真相は語られてはいない。

公式記録としては、王太子誘拐事件がグランベリー海賊団の手によって起こり、

その過程で、ノーデル星マラッサが壊滅したことを記するのみである。

少年リュカに至っては、その存在さえも疑う歴史家も少なくない。


少年リュカが公式に名前を残すのは、ウルスが42歳の時に

実施したノーデル事件慰霊祭にて、建設された石像「少年リュカ像」の

存在のみである。

左手を身体前方に突き上げ、未来に導くような少年像で

建設されたワニィ星の観光スポットとして、

またウルスファンの聖地として知られている。


少年リュカ像の建設に当たっても、ウルスは詳細を述べず、

ただ、「未来に希望を感じる少年像を制作してくれ」と指示したのみであったが、

少年リュカ像に刻まれた文字が

「僕らの未来」

という言葉であり、ウルスにとって特別な存在であることは

疑いようがなくなかった。

だが、その真意は不明であり、後世の作家たちに

多くの創作の機会を与えることとなった。


王太子誘拐事件とそれに続くノーデル事件が

ウルスの無色王子と揶揄された存在から

王道を進む王子へと成長する分岐点となったことは

多くの歴史家が認めることであり、少年の成長の過程に

リュカという少年が関わっているだろうとの推測は

多くの賛同者を得、ウルス王の原点と言われる所以となる。

それもあって少年リュカは、

ウルスが求める王のモデルであると言われている。


しかし、一般的に広まっている認識としては、

セカンドラーンの小説「ノーデルの王」の

リュカ像である。

「ノーデルの王」では、リュカはそもそも少年ではなく、

グランベリーの配下の青年海賊として登場する。

海賊リュカは誘拐したウルスと意気投合し、

グランベリーを裏切り、ウルスを救出した男として描かれた。

この斬新な歴史解釈は、映画の評価の高さも相まって、

幅広い国民に知られるところとなるが、

フィクションのリュカと言われ、

歴史愛好家からは評価は低い。


ウルス伝記の第一人者、ホーリーは

二次資料であるノーデル事件の生存者 ギャブの証言

「リュカはウルスの友達であり、僕らは仲間だった」

の言を重視し、炎上するノーデル星からの脱出行における

ウルスとリュカのパートナー関係を提唱している。

ここでのリュカはノーデル星に住む少年リュカとして認知されており、

ワニィ星の少年リュカ像のモデルと合致するため、

歴史愛好家たちの支持は厚いが、

物語としては魅力がなく、またウルスが王道に目覚める話との関連性も薄いため

一般受けすることなく、ノンフィクションのリュカと言われている。


しかし、その実在するかわからない少年という存在が、

多くの人を魅了しているのは事実であり、

ウルスという人間の、しいては春風戦争の

重要なキーパーソンであることは

多くの歴史家の共通認識であった。


春風戦争を題材にしたゲームにおいても、

その能力値は総じて高く設定されている。

ただし、ノーデル事件が起きたのが星暦986年に対して、

多くのゲーム作品が星歴995年以降を

モチーフにしているため、リュカはウルス配下の人材ではなく、

在野の士、隠しキャラ的な存在として扱われる事が多い。

そのような理由もあって、誰もが知っている隠しキャラという

矛盾した性質を持つ。


このように少年リュカのイメージは一人歩きしており、

実際の彼がどんな性格だったのか、どんな人物であったのかは

二の次となっている。


星暦1282年にリュカの子孫であるという人物が名乗りをあげたが、

証拠は何もなく、信憑性に欠けたため

公式に認知されることはなかった。

彼が言うには、リュカはウルスを救出しノーデル星を脱出した後、

名を変え、ピュッセル海賊団に加入したという。

その縁で、ウルスとピュッセル海賊団の繋がりが出来たと主張しており、

長年謎であったウルスとピュッセル海賊団の関係性に一石を投じた。


だが、それが事実であるならば、ウルス陣営にピュッセル海賊団が

組み込まれた際に、リュカは重要なポストに付いていなければおかしい。

歴史に名を残す元ピュッセル海賊団のメンバーで、

彼がリュカだと思われるメンバーがいないため、

リュカ=ピュッセル海賊団員という主張は現在では否定されている。


いずれにせよ不明点の多い少年リュカ像であるが、

その人気や神秘性も伴って、

「石像未来」ということわざが生まれた。

石像に刻まれた言葉から派生したことわざである。

石像未来とは「他人と約束した事柄を、未来においても守り続ける」

という意味で使われる。

使用例としては、母親が子どもに


「嘘はついちゃダメよ。石像未来によろしくね。」


などである。

また自ら使う場合は、


「わかった。石像未来に誓うよ。」


など、誓いをたてる場面で使われるが、この使い方は

映画やドラマなどフィクションで多く、日常ではあまり使われてはいない。





「マージナル・ブレイク伯爵」


944年~986年没

父:マックス・ブレイク伯爵

母:ガレット伯爵夫人

子:キッド・ブレイク

 :ゲイリ・ブレイク


元スノートール王国・軍務尚書の肩書きを持つ。

一般にはウルスの養育係やゲイリの父として知られる。



カルス王の学友であり、メイザー公爵が勢力を伸ばす王宮にあって、

王派の筆頭として出世を重ねていったが、

980年のカラヴァンチ戦争の敗戦の責任を取り、

軍務尚書を失脚し、影響力を失った。

この戦争で長男を亡くしている。


ウルス誕生の同年に次男であるゲイリを生んだことと、

失脚や長男の死という境遇に哀れんだ王が、

ウルスの教育係として彼を抜擢し、

王宮への影響力回復を再度狙ったが、

既にメイザー公爵の勢力を抑えることはできなかった。



歴史的評価としては、評価は高くなく、

また、ウルスやゲイリの養育に関しても

特筆すべき資料は残っていない。


自身の能力に関しても、王宮の不正を是正しようと

不正貴族の摘発などに成果を上げるが、

その分、敵を作る事も多く、

後述する王宮内での男性陣からの不人気もあり、

いち公人としての能力はあったが、

組織や派閥をまとめあげるなどのリーダー的な資質はなかった。

また、軍人としても、

全てが上手く行くような壮大な作戦計画を練るが、

机上の空論で、実際は破綻するという事をやっている。

カラヴァンチ戦争の敗戦に於いても、

敵対するワルクワ王国も、スノートール王国も

損をしない折衷案を計画していたが、

その隙をワルクワ王国に突かれ、

カラヴァンチ星域を失うこととなった。

計画能力はあるが、臨機応変さに欠けるというのが

彼の評価である。


人物的評価としては、かなりの紳士であり、

王宮のマダムたちの人気は高かったが、

その分、男性たちの反感を買っており、

それが王派が公爵派に押される要因のひとつとも言われている。


性格は真面目で、正義感に強く、

固い性格であったとされ、曲がった事が嫌いで、

権力に物怖じする事もなく、

カルス王に忠言をする数少ない

側近であったとされる。


軍人ではあったが、華奢なほうで色男であったため、

外見だけの優男と見られる事も多くかった。

そのためか、彼を養育係とする王太子ウルスの評価にも、

天性の美貌を誇るウルスと重ねられ、

ウルスの評価を美貌だけの無色王子と揶揄される事になる。


だが、カルス王の信頼は絶対であったようで、

彼の死の報を知った際、大いに悲しんだと言われる。

同じく誘拐されながらも生き戻ったウルスに対しては

彼の死後、王と王子はますます疎遠になったことから、

逆恨みの感情があり、

カルスとウルス親子の不仲を招いた原因とも言われている。


その死因に関しては、王太子誘拐事件及びマラッサ事件の当事者の多くが

その口を閉ざしたため、詳細な理由はわからないが、

王子ウルスと王女セリアを守るために命を落としたという説が

通説である

しかし、謎の多い人物、少年リュカとの対比で、

彼を英雄視する層からは、逆に海賊に王子と王女を売ったのが

ブレイク伯で、王太子誘拐事件の真の首謀者であると言われている。

ただし、ブレイク伯が王子王女を海賊に売る根拠に乏しく、

彼にメリットはほぼない事から、物語の域を超えない。


歴史家ホーリーの評は下記である。


「養育係や後見人と正反対の性格に育つ者は、歴史上少なくない。

だが、その全ての偉人が、養育係や後見人を嫌っていたとは限らず、

性格は正反対なれど、お互いを信頼していた場面というのは多々見られる。

ウルスとマージナルの関係性においても、

険悪であったという資料はなく、またウルスが

マージナルタイプの真面目な配下を重宝したことから、

2人の関係は良好であったと思われる。

問題は息子であるゲイリとの関係で、

ゲイリが真面目な官僚タイプを毛嫌いしている事から、

ゲイリはマージナルに対して反発していたと推測される。

この事から、マージナルは家庭内においては、

実の息子であるゲイリよりも王太子であるウルスの

養育に力を入れていたと予想され、

彼が私事よりも、公務を優先する性格だったのがわかる。


ウルスの性格形成には、ゲイリの影響が大きいと言われているが、

ゲイリにない官僚的な考え方や価値観は

マージナルより受け継いだと考えられる。

従って彼の影響力は決して低くはないが、

それは彼が養育係だったという一点のみで集約され、

当時の貴族社会においては一般的な価値観であり、

特段、彼が特別だったわけではない。」


と、一定の評価をするに留める。


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