幸せスクラップ
プリントを後ろに回して!!
幸せスクラップ
僕はとんでもなく貧乏だ!!
数十年前人類に魔力が宿ってた日から世界の構造はガラッと変わった。
人類が魔力を持つことによって生活や仕事においてかなり効率的な生産活動を行えるようなった。
しかし、問題もある。今まで機械に任せていた仕事が魔力で何とかなる時代へと変化したことで、工場から大量のスクラップが排出された。
更に全ての人類が魔力を持つということでもなく、魔力を持つ人間と持たない人間の間に大きな格差が生じてしまった。
そしてその持たない側の人間それが僕だ!
我が家は誰も魔力を有していないため、働き口が全くなくすこぶる貧しい!
父さん母さんは毎日仕事。僕も生活の足しにするために毎日廃棄物の山から金属片や鉄くずを漁って、街に売りに行っている。
そんなある日のこと、いつものように廃棄物の山を漁っていると聞きなれない機械音がした。
ゴミ山の中にか細く赤く点滅するその機械は、おそらく価格判定基機というロボットだろう。
人型のそれは下半身はなくズタズタで錆び付いている。
胸の中央あたりが光っているのでまだ息はあるようだが、次の雨で完全にショートするだろう。
僕は興味本位でそのロボットに声をかけてみた。
「こんちわ!僕はニコっていうんだ!」
しばらくの沈黙の後ロボットは電子音で返事をする。
「ニンゲンサマ、カカクヲハンテイナサイマスカ?」
どうも会話出来るほど優秀なヤツではないらしい。
価格判定機とはその名の通り色んなものの価格を見積もってくれるものだ。
僕は試しに持っていた金属片を近づけてみた。
「……カチヲミイダシマシタ」
それだけ!? どうやらもう価値があるかないかくらいしか判断出来ないようだ。
それからというもの僕はそのロボットに毎日のように金属片や鉄くずを持っていった。
別に価格を判定して欲しわけではなく、ただ何となく雑談をしに言っていたのだ。
僕はロボに自分のことや家族のこと、今の現状をみんな話した。しかし相変わらず
「カチヲミイダシマシタ」か「カチヲミイダセマセン」
の二言くらいしか返事が帰ってこない。
そんなある日僕は街に住む連中に殴られて帰ってきた。
雨が降る中僕は膝を抱えあのロボの前に座り込んでいた。
「ロボ、、、聞いてくれよ。」
「……………」
雨が降っている。ロボにはもう返事をする力がないのだろう。
構わず僕は話を続ける。
「僕、魔力が無いことをどんなにバカにされても街の連中に手を上げることなんて今まで無かった。」
「けど、アイツら僕がいつかこの街1番の大金持ちになって1番高い建物の最上階に住むんだって言ったら大笑いしやがった。」
「お前にそんなこと出来るわけないって。お前の家族全員いずれ廃棄物の山の1部になるだけだって」
「許せなくて。僕あいつらに初めて手を出しちまった。」
「なぁ僕の夢はそんなに愚かなのかな。僕の夢はここのスクラップと変わらないものなのかな」
ロボは一切反応をしない。どうやらもう完全にショートしてるようだ。
僕は立ち上がりその場を離れようとした時。ザザァーという微かな音と共に今にも消え入りそうな電子音でロボは反応を示した。
「………カチヲミイダシマシタ」
僕はロボのその最後の言葉を背に走り出した。
雨で視界はボヤけるが、足取りは明日へと向かっていた。
幸せスクラップ プリントを後ろに回して!! @sannnnyyy
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます