神話あるいは伝奇としての、ホラーと渾然一体になったラブロマンス

 初恋の少年を事故によって亡くした少女が、やがて長じた後、〝その少年と同じ姿形をした何者か〟と再会するお話。
 ホラー、のような神話です。人ならざる怪異が登場するものの、しかしそれらが単純に「悪しき存在(人にあだなすもの)」であることから来る恐怖ではなく、むしろラブロマンスであるところに怖気立つような恐怖を感じさせてくれる作品。
 タグの「人外×人間」をものすごい濃度で煮詰めたというか、神なるものとの契りが禁忌であることを、容赦なく叩きつけてくるのがたまりません。他にも「寝取り」なども含め、全編がいろんな〝禁忌〟に彩られているかのようで、もうぐいぐい惹きつけられるみたいに読みました。えっぐい!
 主人公の明里さんが好きです。地の文、彼女の紡ぐ独白から漂う、このなんとも言いようのない邪悪さ! 絶妙な受身感というか言い訳ぶりというか、細かいところがいちいち許せないのに、でも嫌いかと言われるとそうじゃない。
 まず正気では超えられないその一線を、でもしれっと超えてしまえる芯の強さに、憧れと嫉妬の混じった想いを抱いてしまう。一見ただ流されているようでいて、その実誰よりも我の強い、たまらない魅力を持った語り手でした。好き〜!