不変



彼女の名前はめぐみ。






めぐみちゃんはどうやら、




幽霊が見えるみたいだ。






自称。霊感がある子を相手にするのは初めてだ。




別に信じていない訳ではない。






根本として、居る。居ない。は別に、




子供には独特の世界観がある。






それは、時に気を引くものとして。




いわゆるツールとして、用いる場合もあるが、




私はそれに対して否定的な感情はない。






誰だって関わりを求め、誰だって愛されたい。




表現の仕方は様々であり、自由なのだから。




子供なら尚更である。






休み時間に生徒にめぐみちゃんの事を尋ねると、




めぐみちゃんは嘘付きだからと、




そう言い、めぐみちゃんを避けたり、




時に物を隠したりしているらしい。






嘘を付く事は良くないが、意地悪をしたり、




物を隠したりする行為にも正当性が無いことを告げ、




次からはしない事を約束し、その場を後にする。






虐めは実にシビアだ。




虐める方も虐められる方も悪いと、




投げやりな意見も多数あるが、




実際はその様な価値観に育てあげた、




周りの大人達の責任だと私は思う。






子供は繊細が故に、




間違いを正しい事だと位置付ける。




だがそこに本当に正しい事かの疑問を投げ掛け、




自らの意思で考えせるのが、




大人の役割だと私は考える。






子供は無邪気だ。




無邪気故の可愛さがある。




が、無邪気は大人に成れば、




時に犯罪として変わる。






子育ては半分洗脳の様なものだ。




環境により、いくらでも悪くも良くも育つ。






"悪い環境だから悪く育ちました"






では、将来自らが身を持って




身に染みて感じる過ちがあるだろう。




だが、その頃にはいろいろと遅過ぎる。






決して戻らない事を一生悔やむ行為程、




どうしようもないと呼べるものはないだろう。






起こした事は結果であり、それが揺らぐ事は決して無い。






そこまで至らない様に今のうちに教えてあげるのも、




教育であり、大人としての役割だと考える。






さて。持論を展開し、押し付けた所で、




めぐみちゃんと話さなくては。






めぐみちゃんは一人でこうていの隅に居た。




私「めぐみちゃん。




めぐみちゃんは幽霊が見えるんだってね?」




めぐみちゃんは砂に落書きをしながら会話する。




めぐみちゃん「うん。




でも、めぐみ以外には見えないみたい。




だから虐められるの。」






砂の絵は何処か悲しそうに映る。




私「そうか。




今も見えるのかな?」




私も一緒になって地面のキャンパスに落書きをする。




めぐみちゃん「うん。




あの、ウサギ小屋の近くに女の子がいる。」






一瞬、あの時の記憶が甦る。




私「そうか。




女の子か、、




どんな女の子なの?」




私は意地悪にも詳しく聞いてしまった。






だがそれが、後に後悔する事になる。






めぐみちゃんは落書きをやめて、




私を見つめながら言った。




めぐみちゃん「んーと。






『ゆいちゃん』






って言う3年生の女の子。」






落書きの枝が折れ、




一瞬。目眩が襲う。




動揺するが、しっかりと対処する。






私「そう、なんだね、、




でもね?私や他の子には見えないんだよ。




だから先生にはそう言っても良いけど、




他のお友達には言わない事って出来るかな?」






めぐみちゃんは無邪気に返答する。




「どうして?」




私「他の子はね。




ゆいちゃんが見えてるものが見えないから、




それは"嘘"って事になって




ゆいちゃんが"嘘つき"ってなっちゃうんだよ。






皆は見えないものがあることがきっと怖いんだ。






先生もそうだよ?




先生が今ここにお花がありますって言ったら、




めぐみちゃんは信じるかな?」






めぐみちゃんは悲しげに下を向く。






私「でも、めぐみちゃんが見える事はかっこいいと思うよ?




先生も本当は見たいもん。






皆羨ましいんだよ。めぐみちゃんが。




だから、先生には言ってもいいけど、




他の子には言わないって約束出来る?」






めぐみちゃん「うん、、




でも、居るんだ。本当に。」




私はめぐみちゃんの頭を撫でる。






私「うん。知ってるよ。先生は信じてるよ?




めぐみちゃんにしか見えないのは先生との約束。






本当は皆。めぐみちゃんと仲良くしたいんだ。






めぐみちゃんも皆と仲良くしたいでしょ?」




めぐみちゃん「うん、」






私「じゃあ、先生との約束ね?




皆の前では見えてても内緒。




でも。先生にはこっそり教えてくれてもいいよ。」






めぐみちゃんは嬉しそうに指切りを交わした。




めぐみちゃんは手を口に付けると、




私の耳元でそっと囁く。




めぐみちゃん「ゆいちゃんが先生とまた遊びたいって」






私は確信した。




めぐみちゃんは本当に見えて居るのだと。






そして、めぐみちゃんの見えている『ゆいちゃん』は、




私の知っているあの事故で亡くなってしまった。




ゆいちゃんなのだと、、






放課後の職員室で、同じ学年の教師と話をする。




教師「どうでしたか?




めぐみちゃんの件は。」




私「はい。




何とか、なりそうです。






心配かけて申し訳ありません。」




パソコン越しに、軽く会釈をする。






教師「いえいぇ、




お互い、頑張りましょう。






きっと、家庭であまり上手くいってないんでしょう、、




子供はそう言って気を引こうとしますからね。」




私は適当に話を合わせ、帰り仕度をする。






話し足りない先生は、




子供の様に口に手を当てて、




耳打ちするように話す。




教師「でも、この学校本当に出るらしいですよ、、」




私「本当ですか~




私そうゆうの苦手で~」




他愛もない話は距離と時間を潰し、関係を構築する。






暗くなりかけた学校は雰囲気を出す。






私「居るんだよね。




この学校には、、






僕の初恋の人が、、」






もう少ししたら、ゆいちゃんのお墓に行ってもいいだろうか。




いや、、




ゆいちゃんはもしかしたらずっと僕の側に居るのかもしれない、、






子供ながらに解放されたと、不謹慎にも思っていたものは、




解放すらおろか、過去に縛り付けられ、




身動きすら取れなくなってしまったようだ。




































































































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学校の怪談とかで有名な、トイレの花子さん的な幽霊は、実は僕の初恋の人でした。 影神 @kagegami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る