学校の怪談とかで有名な、トイレの花子さん的な幽霊は、実は僕の初恋の人でした。
影神
変化
小学生の頃は単純で、
『好き』
という感情を率直に言えた。
それが大人なるにつれて、
好きと言う言葉は複雑になり、
言葉の意味や、責任が伴う結果がうまれた。
ああ、あの頃の単純で綺麗な『好き』は、
一体何処へいってしまったのだろうか。
長年の夢だった、教師を夢見て、ひたすら勉強した。
だが、いざ教師になると、
実際の教師と呼ばれる者は、
私の理想とは異なった。
地元を離れ、赴任した先では、教師同士の派閥。
保護者と教師の関係性や、生徒と教師の関係。
教師と教育委員会等との関係が酷く荒んでいた。
きっと、全てを説明するには、
私の昼休みがそれで終わってしまうだろう。
真剣に事実と向き合えば、離され、
上手く立ち回れば、両者に陰口を言われ、
子供の意見に耳を傾ければ、
親からの偏った意見で生徒の明るい未来は潰された。
愛想良くしなければ、目を付けられ、
あることないことを教育委員会にまで流され、
教師と言う職業に挫折した。
精神をやられ、引きこもる様になると、
周りの目は良くはなかった。
私はどうしようもなくなり、地元へと逃げた。
こうして、母校への赴任が決まり、現在へと至る。
何故最初から地元を選ばなかったのか、
それは私の初恋の人の話しにまで遡る。
僕が小学校3年生だった頃。
転校生として来た『ゆいちゃん』に僕は初恋をした。
ゆいちゃんは離婚して、こっちへ来たらしいが、
お父さんのお母さんと上手くいかなかったらしい。
それだからか、僕達に対しても、
あまり心を開くような子ではなかった。
ある日の放課後。
友達に委員会の仕事をすっぽかされ、
ウサギ小屋の掃除を一人でしていると、
遠くからゆいちゃんがこっちを見ていた。
教室で一人ぼっちだったゆいちゃんは転校生を失敗した。
別に虐められる様な事もされなければ、
グループに誘われる様な事すらもなかった。
僕はそんなゆいちゃんが可哀想だった。
多分ウサギを見ているであろう、ゆいちゃんを僕は呼んだ。
ゆいちゃんは戸惑っていたが、僕以外誰も居なかったので、
ゆっくりとウサギ小屋へと来た。
僕「ウサギ好きなの?」
ゆいちゃんは黙っていた。
僕「ウサギの藁を変えなくちゃいけないから、
良かったらウサギを移動するの手伝って貰えるかな?」
ゆいちゃんは頭を縦に振るとウサギ小屋に入ってきた。
ウサギはゆいちゃんから逃げるとゆいちゃんはウサギを追う。
それが何だか楽しくて僕は笑っていた。
すると、いつの間にか、ゆいちゃんも笑っていた。
次の日に友達に当番の事を責めるとちゃんと謝った。
ゆいちゃんが手伝ってくれた事を告げると、
少し驚いていたけれど、友達はゆいちゃんにお礼を言った。
すると、ゆいちゃんがウサギが好きな事を知った皆は、
ウサギを経由して、ゆいちゃんと関わるようになった。
放課後、職員室へと担任の先生に呼ばれ、
行くと、ゆいちゃんの件でお礼を言われた。
先生も気になっていたらしくて、
でも自分で解決出来るように促すのも、
教師の役割だと、そう言っていた。
ゆいちゃんは可愛かった。
ゆいちゃんの笑顔が僕は好きだった。
でも、ゆいちゃんはそれからしばらくもしないで亡くなった。
運悪く、車が突っ込んで来て、死んでしまった。
ようやく仲良くなれたのに、
皆そう、泣いて悔やんだ。
僕は不思議と涙は流れなかった。
ゆいちゃんが無理していた事に気付いていたからだ。
子供ながらにゆいちゃんはやっと解放されたと、
そう不謹慎にも思っていた。
ゆいちゃんは家が嫌いだったらしい。
いくら学校で笑顔になっても、
翌日には暗い顔でやってくる。
いつの日かウサギ小屋で2人で居た時、
ゆいちゃんがそっと言ったのを覚えている。
ゆいちゃん「家に帰りたくないな、、」
僕「どうして?
家に帰らなければ何処へ帰るの?」
ゆいちゃん「、、お母さんの所、、」
僕「お父さん嫌い?」
ゆいちゃん「うぅん、、
おばあちゃんが意地悪するから、、」
僕「そうなんだ、、」
子供は無知故に、無力であり、残酷だ。
今思えば、ゆいちゃんはおばあちゃんに
虐待されていたんだろう。
お父さんは仕事で忙しく、
おばあちゃんと2人になる事の方が多かった。
そう、推測し、ちゃんと考えられる様になったのも、
きっと、前職の経験があったからかもしれない。
当時は残酷にも他人事の様に聞き流していた。
もしかしたら、私が誰かに相談していれば、
ゆいちゃんは変わる事が出来たのだろうか、、
記憶を遡り、そんな後悔をしない事もなかった。
それらから自らを責める様になると、当然の様に、
ゆいちゃんの居た母校からは離れる様になった。
子供が経済的理由や、性格の不一致、
家庭の状況等で、虐待をされるケースは少なくない。
実際、教師と言う立場では、何も出来ないのだ。
児童相談所等と呼ばれる名ばかりの施設があるが、
現状は、児相の介入により、ケースが悪化し、
最悪の場合を迎える事の方が多い。
子供を守ると言うものは実に難しく、
公共の組織や団体は、結果が出てからしか、
対応する事が出来ないのだ。
子供を守るには法律や、行政があまりにも非力過ぎる。
そう、まじまじと私は実感する。
赴任してから副担任をえて、
新3年生の担任を任される様になった。
その中にゆいちゃんの様な生徒が居た。
だが、ゆいちゃんとは違い、彼女は苛められている。
私は彼女と向き合わなければならない。
どうして彼女が苛められているのか、
それはまた次の話にしよう。
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