第8節「迷宮と探索」1
「今日は何受ける?」
「なんでもいいわよ。」
「私も特に受けたいものとかはないですね。」
「サロスが受けたいの適当に受けてきていいよ。」
「ちょっとあーんた達!何でも良いが一番困るんだよ!ほら、なんかないわけ?」
Cランクになって数日が経過した。新しく受けられるようになった依頼もあったのでそれを受けていた。今までより強い魔物であり報酬も少し多くなった。新鮮味があって面白かったのだが、人間というものはすぐに慣れてしまうものらしい。
「「「…」」」
「せめて何かしらは答えてくれよ。えーと、それならフォレストボアの討伐とかでいい?」
「えー、でもそれ前も受けたじゃない。」
「文句を言うんじゃありません!そんなことを言うともうご飯を作ってあげませんよ!」
「子どもに食べたいものを聞いて、何でも良いって返してきたからこれでいい?って提案したのにそれは嫌って返してきたのに怒る親かよ。」
「アダマス、ツッコみ長いですよ。」
「う、うるせー!これでも短くした方だよ!」
謎会話を挟んだところで、ほんとにどうしようか。
「そうだ、せっかくCランクになったんだから迷宮とかに行ってみない?」
「そっか、俺達でも入れるようになったのか。」
「いいんじゃないかしら。それならもっとしっかり準備しなくちゃいけないわ。」
「そうですね。みなさん反対もないようですし、今日は準備に当てましょう。」
「そうだね。向こうで一泊はする必要があるだろうから。食料とかポーションとかの消耗品とかを買うか。」
迷宮、この町から少し離れたところにある場所だ。もっとも世界中にいくつかあるらしいがここで話しているのは他の場所ではないだろう。
Cランク以上の冒険者が入ることが可能で、多くの魔物が出現する。定期的に倒さなければ溢れてしまうらしいが冒険者も多数中に入って討伐が行われるため、最終的にそうなったということは知る限り聞かない。昔はそういうことがあったらしい、というだけだ。
そんな迷宮には階層があり、深くなればなるほど強い魔物が出現するらしい。だから階層ごとに入れる冒険者のランク制限があるそうだ。だから迷宮に行けるといっても浅いところだけだな。
最深部は何階層目なのかはいまだにわかってないらしい。現在到達している最深部って何階だっけ。たしか50くらいだった気がする。そこまで深いと迷宮の中で何日も過ごすことになるだろうし、大変だな。自分たちはまだそのレベルにいないのだけれど。
さて、この町に来てから初の遠出となりそうだ。ちょっとワクワクしてきたぜ。
_______________________
次の日。
「ただいまから持ち物の最終確認を行う!」
「「「はい!」」」
自分でやっておいてなんだが軍隊かな?こういうのを訓練場でやればよいのかもしれない。
「現地調達もする予定ではあるが、最低限の食料、水分は持ったか!」
「「「はい!」」」
「ポーション等の回復に使用するものは持ったか!」
「「「はい!」」」
「着替えは持ったか!」
一泊しかしない予定なので上は最悪着まわせばいいが下着はそのままというわけにはいかないだろう。
「「「はい!」」」
やっべぇ、なんか楽しくなってきた。自分の一声で全員が動いている感じ。たまらない。なるほど、軍を統制する人はこんな気持ちなのか。いや、もっと大人数を動かすのだからこれ以上なのかもしれない。身近なところでいうと、教師なんかも同じだったりするのかな?
「最後に、志は持ったか!」
「「「勿論です!」」」
「よろしい!それでは安全第一を信念に持って、行くぞ!」
「「「はい!!!」」」
た、楽しい!(光悦)
目的の場所までは電車で向かった。
「ここに迷宮があるのか。なんか栄えてますね。」
「魔物を討伐してお金を手に入れる冒険者が多いから、その金をぱーっと消費したくなるんでしょ。そのニーズに合わせて色々な店が建てられるからこの辺は結構繁華街らしい。」
「へえ、そうなんだ。」
「うんうん、経済が回りやすくていろんなものが集まるから、昔は天下の台所って呼ばれたらしい。」
言われてみれば学校で学んだ気がする。
「アダマス隊員、詳しいな。その知識称賛に値する。」
「お前は誰なんだよ。」
「誰ってこの隊の隊長だが?」
「サロス出発前の号令で調子に乗っちゃってるみたいで。ほっといてあげて。」
「なにを言うかフィスィ隊員。その言い方はいただけないな。」
「ああ、もうあの頃のサロス君は戻ってこないんですね…。」
「そうみたいなの…。私が至らないばっかりにこんな事になってしまって…。」
フィスィとディプラが可哀想な目で見てくるが知ったことじゃない。
「サロスのことはほっておいて受付に向かおう。少し並んでるようだからその間に元に戻るだろ。」
「そうね、早く行きましょ。」
「わかりました。そうしましょう。」
「ま、待ってよぉぉぉー。」
「性格コロコロ変わりすぎでしょ。あんた本当に誰よ。」
だんだん恥ずかしくなってきたところだったのでもとに戻るタイミングが生まれてちょうどよかった、ということにしておこう。全くこんな辱めをうけるなんてこれだから最近の若いもんは困ったものだ。
万能魔導士は冒険者に向いてない 札川凛太 @rinta-syosetu
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