第7節「昇格試験と愛情表現」3

【身体強化】

 右足に全力で魔法をかける。そしてすぐに地面を蹴って突撃。まずは一発叩きこむ!


「おっと。中々早いですね。」


 案の定というべきか驚くべきか。余裕をもって受け止められる。この人オーラに違わずやるな。だがそれも想定内。剣を二つ持っているので一つを受け止められても追撃が可能。


「はあ!」


「うん、悪くないです。ですが!」


 受け止めた剣に力を入れてそのまま振るわれる。軽く飛ばされて追撃を入れられなかった。力勝負されると勝てんのよな。


「一度受け止めたのでね。次はこちらから行きますよ!」


 速い。言葉を話し終わる前に突きを繰り出された。でもそれはラットレギオンマスターよりは遅い。速いだけだったら慣れたんだよ!


 ギリギリで回避。それと同時に追撃を…!?


「よく今の避けましたね。」


「お褒めに預かり光栄ですよ。」


 あっぶなー。突きで近づいた状態から横薙ぎに振るわれた。少し反応が遅れれば当たってたな。やはり対人戦は魔物との戦いかたとは違う。気をつけなければ。


 お互いが一度ずつ攻撃をし合ったところで一度間を開ける。視線で牽制し合っているといえば聞こえがいいが向こうは次の俺の行動を待っているだけだろうな。ならお言葉に甘えて。


 この感じは長く続けても意味は薄いだろう。ついで決めてみせる。


 掛け声もなく瞬時に間合いを詰める。同時に攻撃。


「先程と同じでは当たりませんよ。」


 知ってるよ。でも対応も同じだ。一度剣で受け止めようとしてくる。このままだったらまた飛ばされるだけだけど、それを知っているから対処法くらい考えてるんだよ。


 自分の剣と相手の剣とが触れた瞬間スッと力を抜く。もちろん剣は飛ばされるが自分はついていっていない。一つ失ったところでもう一つある。問題ない。そちらの剣を両手で持ち直して空いた腹あたりに一撃を…。


 刹那自分の横腹に激痛が走った。何があった?


「失礼。少し本気を出してしまいました。」


 その言葉で気づく。俺は今剣に当たって飛ばされたのか。だが剣を別方向に振らせるまではできていたはず。


「お疲れ様です。立てますか?」


「はい。大丈夫です。」


 地面に尻餅を付いている状態から手を差し伸べられる。その手を掴んで立ち上がった後質問する。


「最後ってどうなったんですか?」


「あれはですね、してやられましたよ。片方の剣を手放すとは考えませんでした。一本の剣で戦うことの方が多いですからね。しっかりと体勢を崩されてしまったので、身体強化で無理やり体を捻って攻撃に転じました。私にもプライドがあるので、負けるわけにはいかないんですよ。」


 うわぁレベルが違うな。あの状態からの攻撃が自分の攻撃よりも早かったのか。


「お疲れ様でした。それでは結果ですが、皆様今回の試験は合格です。サロス様に関しては始めの動きだけで合格だったんですがね。少しやれそうだったので続けてしまいました。」


 合格、よかった。この人が戦闘狂っぽいのは気にしないでおこう。


「動き自体は良かったと思います。相手が私だから何とかしましたがある程度の実力の人なら通用すると思います。ただ、わかっているかもしれませんが戦闘中に武器を手放すのはあまりよくないです。リカバリーが聞きづらいので。もう少し手数を増やせるとよいと思います。」


 それは耳の痛い話だ。だが練習期間も短かったし仕方がないと言えばそうだろう。模擬戦なので使わなかったが、魔物と戦うときはその他の魔法も使うわけだからもう少し強くはなれると思う。要練習だな。


「ありがとうございました。」

「「「ありがとうございました。」」」


 自分の礼に続いて三人も礼を言う。


「はい。手続きがありますので、この紙をもって受付まで行ってください。」


「わかりました。」






「一瞬だったね。」


「短期間で決めようと思ってたからね。でも悔しいなー。」


「もう少しで一撃入れられそうでしたね。あの人何者なのでしょうか。」


 ほんと何者なのだろう。冒険者で活躍して引退後なんやかんやでギルドで働き始めたとか、そういう感じなのかな。


「でも戦ってるの楽しそうだったな。俺も模擬戦形式選べばよかったかも。」


「アダマスは威力のある魔法を使えるんだからそれでいいでしょ。」


「でもあの実力の人と戦えたのはいい経験だろ。羨ましいよ。」


「自分とも戦ってくださいって言いに行けば?まだまだ戦い足りなさそうじゃなかった?」


「流石にそれはやめとく。」


 嬉々として戦ってくれそうなのに、残念。忙しいだろうから断られるかもしれないけど。


 その後受付でギルドカードの更新をした。カードに輝く(比喩)Cの文字。順調(?)に成長とランクアップを続けられているだろう。




「Cランクになったら報酬も上がるかもね。」


「多分マシになると思うよ。その分難しくはなるだろうけど。」


「それでもサロスが何とかしてくれるんでしょ。期待してるわよ。」


究極魔導士スペシャリスト様の方が活躍できるだろ。」


「勿論魔法なら私の方が活躍するだろうけど、私はサロス自身に期待してるのよ。」


「何それ。」


「ふふふ、これからもがんばろーね!」


 なんか知らないけど期待してもらってるらしい。ならそれにこたえなくちゃいけないな。フィスィのために頑張るくらいしか俺にはできないから。






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作者より

 年末年始休暇に入ります。次回は1/5投稿です。

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