第7節「昇格試験と愛情表現」2
「本日はお越しいただきありがとうございます。これよりCランク昇格試験を始めたいと思います。魔法を放つ方式の試験か模擬戦形式の試験か、どちらになさいますか?」
「私は魔法の方で!」
「私も同じくです!」
「俺も魔法でお願いします。」
「俺だけは模擬戦形式の方でお願いします。」
「はい、それではまず御三方の魔法を見る方から始めていきたいと思います。場所までご案内します。」
自分が答えた時に少し驚いたような顔を一瞬したが、すぐに元に戻り説明を続けた。珍しいのだろうな。とはいえいないことはないのだろうと思う。
「お久しぶりです。本日は私が試験監督を務めさせていただきます。」
案内された場所に向かうとギルド長がいた。長ともあろう人がただのDランク冒険者の昇格試験を行うものなのだろうか。疑問には思ったが、他の人に任せてトラブルになるくらいなら始めから上の人がやっておこうと言う判断なのかもしれない。
簡単な試験だと言っていたのに最短でも三日後にしか受けられないというのはギルド長のスケジュールを調整するためだったりして。可能性はないことはないと思うが、他の冒険者の知り合いがいないため確認ができない。シンプルに予定が埋まってただけかもしれないからね。
「早速ですが始めてもよろしいでしょうか。はい、それではまずあちらに見える的に一人ずつ魔法を放ってもらいます。全力の半分くらいの力で構いませんので。強い魔法を放とう放とうとして狙いがブレる人がたまにいらっしゃるのでお気をつけください。」
「私からやってもいいですか?他二人の後だと物足りない感が出ちゃう気がするんですよね。」
「いいわよ。」
「わかった。」
「それでは、ディプラ様ですね。自分のタイミングで始めてもらって結構です。」
「はーい!なら早速いきます。【ウォーターボム】」
球状の水が的に向かっていき、当たった瞬間に爆ぜた。見たことのない魔法だな。このために練習してきたのかな?俺と同じじゃーん。
「はい、威力精度共に申し分ないですね。それでは次の方お願いします。」
「なら次は俺で。いいよな。」
「うん。」
「アダマス様、ですね。それではどうぞ。」
「はい。【ファイアブラスト】」
アダマスまで、使ってるのを見たことがない魔法を使っている。全くみんなして張り切っちゃってるんだからー。彼が放った魔法は的に当たると爆発。重低音が響いた。なんで二人して爆発させてるんだよもっと他にも魔法あっただろ。アダマスとかいつか大爆発魔法とか使ってそうだな。
「こちらも問題ありませんね。的を変えるので少々お待ちください。それでは最後、フィスィさんお願いします。」
「わかったわ。【ウィンドブラスト】」
だからなんで爆発系の魔法なんだよ。え?俺が知らないだけで流行ってんの?フィスィのは流石に見たことはあったけどあんまり使ってなかっただろ。ほんとなんでだよ。
「はい、御三方ともこちらは問題ありませんね。では次、軽く動いている的を狙っていただきます。」
そんな感じでパターンを変えて、何回か魔法を見せた。この感じなら全員問題ないだろう。後は俺だな。
「皆さんお疲れ様でした。そしてお待たせいたしました。サロス様は模擬戦形式を希望ですね。私がお相手をいたします。全力でかかってきていただいて構いませんので。」
え、マジ?流石に模擬戦の相手は別の人でギルド長さんは試験監督に徹すると思ってたんだけど。しかもなんか乗り気っぽいし。俺たちの試験だから来たのかと思ってたけど、ただ戦うのが好きなだけの人という可能性が出てきたな。いくらなんでもそれはないか。
「あくまで模擬戦ですので武器は歯を潰したものをこちらで用意しています。そちらにあるものから選んで使ってください。通常使っている武器と違うものになるので戦いにくいかもしれませんが、ちゃんとそれを踏まえた上で合格判断を致しますのでご安心ください。では、どの武器にいたしますか?」
言われて武器を見る。本当はシンプルな長剣とかの方がいいのかもしれないな。でも俺はもう決めているから。
「この二本にしてもいいですか?」
「ほう、両方使うということでしょうか?」
「はい。」
「なるほど。もちろん構いませんよ。」
興味深そうに相槌を打った後にやりと笑って許可をくれた。この人の溢れ出る強キャラ感はなんなのだろう。前見た時は可哀想な人としか思わなかったのに、しかもさっきまでも別にそんなふうには思わなかったのに。本当に戦いとかが好きなのだろうか。それならギルド長という役職合ってなくない?
「ではよろしくお願いします。」
「はいよろしくお願いします。好きなように攻撃してきてください。」
向かい合う。なんか知らないけどムカついてきたな。痛い一撃でも入れてやろうか。いや、目標は勝つことにおいておこう。目標にする分にはタダだからね。
相手の強さは全然わからないけど模擬戦の相手を務めるくらいだから相当な実力はあるのだろう。相手に怪我をさせないためには実力差があればあるほどいいだろうから。そう仮定して、俺の取るべき方針は先手必勝だな。せっかく好きなように攻撃していいといてくれているのだから。
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