第7節「昇格試験と愛情表現」1

「いやー、なんやかんやで買っちゃったね。」


「そうですね。でもいい買い物だったと思います。昨日は帰ってからちょっと使ってみたんですけど、アダマスに貰ったものより断然魔法の増強効果を感じられました。い、いえ、アダマスのが悪いって言ってるわけじゃないですよ?」


「流石にそれはわかってるから大丈夫だって。ディプラ、何回もその杖を見てはうっとりしてたし相当嬉しかったんだろ?」


「や、やめてくださいよぉ。」


「あらあら、可愛いとこあるじゃない。」


「そういうフィスィも似たような感じだったけどね。」


「うっさいアダマスも同じでしょ。」


「俺はどういう感じで使えば使いこなせるか考えてただけだし。」


「わたしもそうなんですけど?」


「そういうならそうなんだろう、うんうん。」


「なんかむかつくわね。」


「まあまあ、皆さん新しい武器を買って張り切ってるんですから、いい感じの依頼でも受けましょうよ。」


「そうだな。俺も実践で使ってみたい。」


「じゃあなんか依頼でも受ける?何にしようか。」


「あれとかいいんじゃない?」


 フィスィが指さしたのはウィーグルアントと呼ばれる魔物の討伐だった。


「うん、というか他にいいものもなさそうだからあれにしようか。」


「いいよ。」

「いいですよ。」


「なら決まりね。リーダーのサロス君、依頼の受注をよろしく頼んだよ。」


 言われなくてもそうするつもりではあったが、こやつ俺のことを使いっ走りと間違えているのでは?リーダーと言えば何でもすると思ってそう。


「なにその言い方。まあわかったよ。」


「うむ、最善を尽くしなさい。」


 本当に誰?フィスィ、だよな?






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「ねえ、暇じゃない?」


「暇だな。」


「暇ですね。」


「うん、暇だ。」


 俺たちの感覚が麻痺ってるのだろうか。ラットスウォームを大量に倒していた俺たちとしては、あまりにもやることが少ない。せっかくの新しい武器なのにそれを生かせていない気がする。ちょっと現れてはサクッと倒しての繰り返しだ。


「この依頼ミスったかな?」


「でも他にいいものもなかったわよ。」


「そうなんだよな。」


「やはりDランクのままでは限界があるではないでしょうか。前にギルド長が、Cランクに昇格するための要件を満たした扱いにする。後は実力試験を受けるだけ、みたいなことを言ってませんでしたか?」


「ああー。言ってた気がするわ。」


「早速その試験を受けません?Cランクになったほうが活動の幅も広がっていいと思います。」


「受けれるときに受けておくか。でも実力試験と言ってもどんな感じなのかな。」


 アダマスが疑問を呈する。


「それ、俺前に調べたよ。Bランク以上に上がるための実力試験は試験官となる職員が特定の討伐依頼に同行して、倒すときの様子を見るって感じらしい。


でもCランクに昇格する人はある程度多くいるからそんなことしてられる暇はなくて、訓練場で魔法を使う様子とかを見るんだって。ほとんど落ちることはないらしいよ。実力不足の人がなんかの手違いでランクアップしてしまって不相応の危険な依頼を受けてしまうのを防ぐためのものだからね。」


「そうなんですか。良く調べてますね。」


「どうも、ラットスウォームの件では調べてないせいでひどい目にあったからね。情報収集は欠かさないようにしてるんだ。」


「それなんかリーダーっぽいな。板についてきたって感じがする。」


「よせやい。」


「サロスが言ってることが本当ならサクッと受けちゃいましょうよ。それで稼ぎも増えるならいいことづくめじゃない。」


「帰ったら早速お願いしてみようか。受付の人に声をかけたら詳しいは話を聞けるっていってたから。」


「そうしようそうしよう。」






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「ではまずこちらが今回の報酬になります。それと、Cランクへの昇格試験をご希望ということでお間違い無いでしょうか。」


「はい。」


「全員分のギルドカードをお預かりしてもよろしいですか?」


「わかりました。」


「ありがとうございます。えーと、必要な要件は全て免除となっていると。はい、皆様受験されることが可能です。最短ですと、三日後に行うことができますがご都合はどうでしょうか。」


「大丈夫だよね?はい、それでお願いします。」


 全員に確認して、問題ないようだったので三日後に決まった。


「それでは簡単に試験内容だけ説明させていただきますね。試験方法は二種類ありまして、的に魔法を放つ方法と模擬戦形式の方法です。基本的には魔法を放つ方ですね。それである程度の威力の魔法を使えたら実力試験は合格です。


ただし、威力が基準に達しなくとも近接戦闘ができれば冒険者としての力はあると判断できますので、模擬戦形式でその実力を見せてもらいます。もちろん勝つ必要はない、というか安全のためにそこそこ強い人が担当しておりますので難しいと思います。


どちらもそこまで難しいものではありません。本当に最低限をふるいにかける程度のものなので、安心してお受けください。」


「なるほど、わかりました。それでは当日よろしくお願いします。」


「かしこまりました。あまり緊張せず気楽にお考えくださいね。」


 そういってお辞儀をされた。自分の魔法は基準の威力には達していないと思うんだよな。それなら模擬戦をすることになる。ちょっと楽しみだな。やれるだけやってみたい。


 自分の実力が試せるよい機会。全力で挑めるように試験までの短い期間で色々試してみようと思う。

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