第3話

「ふんふーん、ふふーん♪」


私は鼻歌交りにスキップをして住みかに向かう。


私は今とても気分がいい。なぜなら今日盗んだところに金貨99枚も入っていたの。あの男は意外と金持ちだったって驚いたよ。



「あれ?」


前を見ると、同じ年くらいの男が何かを巻いて寒さを凌いでいる。まあ今の季節、昼は温いが、夜は少し冷える。当然の対策だろう。


あの人も私と一緒なんだね。家がなく、頼れる人もいない孤独な人。


その男は暗くてよく見えないがとてもしょげているように見える。


(たまには良いことでもしよっかな?幸せを分けてあげなくちゃ)


そう思って私は男に近づく。


「そこのお兄さん。金貨一枚あげるから私のように強く生きるんだよ?」


男は顔を少しあげ、手を出す。そこに私は金貨を一枚落とす。


「え..ありがとうござい……」


男と私の目が合う。その男は私ははっきり誰か分かる。昼間私がお金を盗んだ人だ。


「え、えーっと」


私はすぐに逃げようとするがすぐに掴まれてしまった。


「ちょっと、離し、わ、わわあわ」


私は掴まれた手をひき離そうとしたが、変な技で抑え込められた。


「や、やめて。離してよ」

「いや、逃げるだろ」


私は必死で抜け出そうとするがなかなか厳しい。しかも、私が激しくするので余計に締め付けが強くなる。


「もう、逃げないから離れて!」

「ほんとうか?」

「本当だから」


そういうと力が弱まる。その一瞬の隙で私は技から抜け出し、立ち上がり逃げようとするが、腕だけ掴まれたままで逃げられず、壁に押し付けられた。


「逃げないと言ってなかったか?」

「今度は本当に逃げないから、ね?」


私は上目遣いをして頼む。


「いや、逃げるだろ」


普通に真顔でかえされた。私自分で言うのもなんだけど可愛いと思うんだよ?


はぁ、仕方ないか。でも、初めてだし……まあ、あの大金が入ると思えば。


「ねえ、私とヤらない?」

「やらない」

「即答!?」


信じられない!私一応胸も大きいのに…。意外とショックだね。


「そんなことより、金は何処にある?」

「.....私の住みかにかくしているよ」


私は観念して言う。


「そうか、連れていけ」




「これだね?」

「ああ、それだな」


私はこっそりと金貨を5枚抜き取って渡す。


「てか、お前こんなところで暮らしているのか?」


男は周りを見て言う。


ここは、寝る場所以外なにもない。寝るといっても藁が乱雑に置かれているだけだ。


「そうだよ?なにか?」


私は起こったように言うと「そうか」と男はポツリと呟いて少し何かを考えた。


そして、その後


「俺と一緒に来ないか?」


そんなことをいった。







「俺と一緒に来ないか?」


俺は彼女に言った。流石にこんな暮らしをしているのを見てなんとも思わない筈がない。かといって、お金を少し渡したからって解決できるものでもない。


それを考慮してのこの案だ。


「ふふふ、あなたって変だね」

「俺が?」


彼女は何故か笑う。


「だって、お金を盗んだ相手だよ?」

「まあ、そうだな。でも、ほっとけないからな、こんなのを見せられると」

「優しいんだね」

「そうなのか?」


俺が優しい……


ーーバチン!、「痛い!」


「うるさいわよ!あんたさえいなければ!」ーー


っ!はぁ、嫌な過去を思い出してしまったな……


「どうしたの?顔色悪いよ?」

「いや、なんでもない」


俺はそう言って誤魔化す。


「で、どうだ?」

「………結局私とヤりたいだけなんじゃ」


なんでそうなるんだ?


「勘違いするな。部屋は別々にとる」

「それじゃあ、あなたに何のメリットがあるの?」


メリット、デメリットなんて関係ないんだが…


「正直メリット、デメリットはどうでもいいが……強いて言うならこの世界のことを教えてほしいな」

「ふふふ、まるで異世界から来たような言い方だね」

「現にそうだからな」


「…………え?」









「ええー!!どれ頼んでもいいの!?」

「あ、ああ。いいぞ?」


俺達はある定食屋に来ていた。


「私はこれとこれとこれ!」

「俺はこれで」


正直メニューが全くわからない。文字は何故かローマ字だから読めるが、何の料理かは全くわからない。


適当に"すちゅとゅび"という料理を頼んだ。


「そういえば、お前名前は?」

「言ってなかったね。私はイリア。そっちは?」

「俺は俊だ」


軽い自己紹介をしていると、もう料理が届いた。すちゅとゅびはどうやらマルゲリーータのようだ。


八等分にされている一切れを掴む。そして一口味わう。濃厚なチーズとトマトソースの相性が抜群でとてもうまい。


「おいしー」


イリアも自分に運ばれてきた料理をほおばっている。


「ねえ、本当にいいの?私なんか連れて行っちゃって」

「ああ、いいぞ」

「........分かった。ありがとう」


イリアは静かに涙を流した。きっと、ずっと孤独で寂しかったんだろうな。


「じゃあ、改めまして。私を仲間にしてください」

「ああ、こちらこそよろしく」


こうして俺達の物語はここから始まったのだ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転移した俺は追放されてひったくりに遭う 千夜一夜nnc @nyanyanyanko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ