第2話

ここ最近で分かったことはスキルがないのは不便だということだ。


近頃、戦闘の訓練などがある。一応剣術の訓練をしてみたのだが、スキル持ちには全く歯が立たなかった。そのため、俺だけ特に鍛えさせられ、毎日が苦痛の日々だ。



ということで俺は今日の訓練をサボった。俺は部屋に閉じこもり、横になる。


(幸せだ)


が、こちらに向かってくる足音が聞こえた。それも大きく。これは指導者のものに違いないだろう。確実にここにいたら地獄な目に遭うだろう。


そうと分かれば俺は窓から部屋を出た。俺は訓練場と反対側の王室がある方へ走った。


そして、ある綺麗な部屋に窓から入った。


(豪勢な部屋だな)


高そうな宝剣やアクセサリーが並んでいる。


それらをじろじろ見て回っていると


「誰よあんた」


突然声をかけられた。


声のした方を見ると、ベッドの上に金髪で小さい女の子がいた。年齢的には13歳くらいだろう。そしてその女の子は寝起きなのか、目をこすりながらこちらを眺めている。


が、だんだん意識が覚醒してくると


「きゃぁーんーむんんん!」


俺は叫ぼうとする少女の口を抑える。


「頼む、叫ばないでくれ。泥棒じゃないんだ!」


俺がそういうと、少女は抵抗する力を弱める。


「すまない、ありがー」


がん!


俺が手を緩めた瞬間、少女は俺の息子を力いっぱい蹴りあげた。


俺はひくひくしながらベッドに倒れ込む。


「覚悟しなさい!悪党を捕まえたわよ、誰か来て!」


少女は声をあげる。








「これからお主には北の要塞にいってもらう。」


あれから、兵隊に捕らえられた俺は王にこんなことを告げられた。


「北の要塞ってどんなところですか」


俺が尋ねると王は一拍おいてから


「寒さは厳しく、魔物のレベルが高い過酷な場所だ。そこに行きたくないのならここから出て行くが良い」


(もともと俺を出て行かせるのが目的か...まあいいか)


「では出て行きます」

「そうか、金は出す。好きなようにせい」

「...はい、ありがとうございます」


俺はすぐさ王宮を出る準備をする。


貰ったお金は金貨100枚。日本円でだいたい100万円だ。結構貰えたな





「あ、俊くん。どうしたのその荷物?どこかに行くの?」


王宮を出る途中、宮崎さんに逢った。


「まあ、なんか任務で……」


王から任務で外出をする呈でいろと言われた。追放したと言うと、イメージが下がるからだろうな。


「そうなんだ、寂しいな」

「え?」

「うんうん!何でもないよ!」


宮崎さんは何故か顔を真っ赤にして首を横にふる。


「あ、私今から訓練だから、頑張ってね!」

「あ、ああ、うん。そっちも」


宮崎さんはこの場から逃げ出すようにさっそうと走っていってしまった。


(ま、今日で皆とおさらばだな)


俺は一人、ゆっくりと王宮を出た。







王都ザンブリア(俺がいた場所)から馬車で二時間ほどの街ヒュントス。俺は今そこにいた。


「へい、そこのあんちゃん。果物買っていかないか?今旬のトチャもあるぞ?」


果物屋のおじさんが声をかけてきた。


「トチャ?」

「ん?知らんのか?甘くてうまいぞ?」

「そうか、一ついくらだ?」

「銅貨70枚だ」


銅貨は一枚1円、銀貨は100円、金貨は1万円だ。つまり、トチャは日本円でいうと70円だ。


流石に銅貨70枚の物を金貨で払うのはあれなので、他の果物も一緒に何個か買った。


俺は今買ったトチャを食べてみる。


「おお、うまいな」


梨みたいな感じだ。水分が多くてみずみずしく、シャリシャリとしてうまい。



俺は取り敢えずぶらりと街を見て回った。日本とは違って初めての文化があって意外と面白い。


ドン!


「あ、すみません」


急に後ろから女の人がぶつかってきた。


「いえ、大丈夫です」

「本当すみません」


その女性は俺と同じくらいの年齢だと思う。フードを被っていて、なかを見ると凄く美人だ。


その女性はいそいそと狭い通路に行く。


何か様子は変だったが、無視をして焼き(鳥?)みたいなものを見つけ、そこに行く。


そこに行ってから気づいた。


「……財布がない」


これは十中八九あの女性に違いない。くそっ、やってしまった。そりゃあ治安は日本よりは良くないわな。


俺は取り敢えずさっき女性が通っていった狭い通路に入った。




「これだけ有れば当分食料には困らないね」


私はさっき盗んだお金を見て思う。さっきの男は果物を買ったの偶然見かけて、金貨をたくさん持っているのが分かったので、ずっとチャンスを伺っていた。こうもうまくいくと嬉しくなる。


「あ、いた。」


不意に後ろから声をかけられる。


「え?」


私は後ろを振り返ると、さっきの男だった。


「金、返してくれる?」

「ん?お金?なんのこと?」


私はとぼける。


「お前がやったのは分かってる。今なら警察にはつき出さないから返してくれ。俺の全財産なんだ」

「へぇー、それが何か?」


男は無言で私に近づいてくる。


「ん?私を捕まえられると思ってるわけ?」


私はすぐに踵をかえして、逃げ出す。あの男は見た感じこの街に初めて来たっぽい。だから確実に私は逃げ切れる。


案の定、すぐに撒くことができた。


(ふふ、今日はお祝いだね)


私はうきうきで住みかへ戻った。






「………見失ったな」


俺は走るのをやめた。犯人を見つけるまでは良かったがなにせ初めてくる場所なのですぐに見失ってしまった。しかも今現在自分の場所が何処なのかさっぱりわからない。


(あるのはこの果物………果物ってこんなに少なかったっけ?)


どうやら走るのに夢中で結構落としてしまったようだ。もと来た道を戻ろうとも、全部同じ道に見えてわからない。果物が落ちていないか探したがそれも見つからない。


取り敢えず俺は右も左も分からず適当に進んだ。大きな通りに出るために。





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