転移した俺は追放されてひったくりに遭う

千夜一夜nnc

第1話

「ここはーーー


気がつくと知らない場所にいた。周りを見渡すと同じクラスの連中がいた。みんなこの状況に戸惑っているようだ。


突然ドアが開いた。


「おぬし達が召喚された者達か」


「は?」

「どういうこと?」

「ふふふー、遂に我の力が解放されるときか」


ぽつぽつと声が漏れてくる。一人おかしい奴もいるが。入ってきたのは王冠をかぶったザ・王様って感じの男だ。


「混乱しているだろうが、聞いて欲しい。ここは、おぬし達がいた世界ではない。今、この国は魔王軍に攻め込まれ、ピンチに陥ってる。そこで、おぬし達の力を貸して欲しい」


「ふざけんじゃねーぞ!俺達を俺達の世界に返しあがれ!」


一人の生徒が声を荒げて抗議する。彼の名前は新蓮。少し荒っぽいが、頼りになる奴だ。


「すまないが、それはできん。おぬし達を帰す魔法がない」


「は!?なめてんのか!勝手に連れてきといて帰せないってどういうことだ!?」


王様(多分)がそう言うと男子はきれ(オタクは「魔法!?」と喜んでいるが)、女子は泣き出すしまつ。


(なにこのカオス)


そう思わずにはいられないほどこの場は混乱していた。


「混乱するは当たり前か...おぬし達の部屋と飯は用意してある。今日はゆっくりやすんで明日話しあおう。おい、召喚された者達を案内しろ」


「はっ!」



俺達は部屋に案内された。そこはとても広く豪華だった。


「部屋はこの4つです。あと奥に大きな部屋がございます。そこも使ってください。お食事の時にはお呼びしますが、それ以外にはこちらにいませんのでご安心を。何かございましたら、気軽にその辺にいる者に声をおかけください。では、失礼します」


案内人はそれだけをいうと出ていってしまった。


特に話すことなく、時間は過ぎていく。みんな戸惑いと現状の確認で話そうとしない。


「みんな、一度話し合おう」


まとまりのないクラスに口を開けたのは学級委員の田島祐介だ。さすが学級委員。


俺達は大きな部屋に集まった。


「まず、これからどうするかだ」

「あんなのに従うわけねーだろ」

「いや、従うべきだと思う」

「は?」


ヤンキー共は従うのに反対したが、田島は賛成の意を示した。


「あの人達は僕たちにこの国を守るためと言っていた。だから、僕たちの待遇もいいはずだ。第一、従わなかったらどうやって生きていくんだ、この世界で」


「そ、それは…」


田島は最もなことを言う。確かにこの世界で勝手に生きろといわれても生きていける気がしない。


「他のみんなはどうかな?」

「いいぞ」

「まあ、特別待遇なら問題ないわね」

「我が勇者となって世界を救う!」


田島の案により、全員が納得する。


ちょうど、「ご飯の支度が出来ました」と声がかかった。田島はすぐにかけよって王と面談したいと述べた。そして、夕食後王との会議することになった。




「す、凄い!」


生徒の一人が声をあげた。


俺達は食事場に向かった。そこにおかれていたのは高級レストラン並みのゴージャスな料理だった。どれもこれも美味しいしそうだ。


「どうぞ、お好きなだけお食べください」

「これって毎日食べられるんですか?」

一人の女子生徒が尋ねる


「はい、これよりは少し質は落ちますが毎日食べられます」


それを聞いた途端女子達が騒ぎ出す。



「うそ!やばい!やっぱりここにいて正解かも」

「そうよね!」


みんな口々に褒める。物に釣られすぎてないか?

晩飯をみんな食べるやいなやまた、褒める。


俺もお肉一口食べ、


「おいしい」


素直にそう思った。


次になんかグロそうな食べ物を食べた。しかし、これがまたほっぺが落ちるほどうまい。


そんな大満足の夕食が終わったあと、王に呼び出された。



「返事がどうか聞かせてもらおうか」

「はい、私達はこの国のために力を捧げます」


王の質問に田島が代表して答える。


「おお、そうか。感謝する」

「しかし、私達にそんなに力がないと思いますが大丈夫なんですか?」

「安心せい、お主らは強力なスキルを得ているはずだ。明日、その検査するつもりだ」

「そうですか、わかりました」


特に、どういった訳でもなく、話し合いはすんなりと終わった。



「ふぃ~ーー」


なんかおっさんみたいな声が出た。やっぱり風呂は最高だな。異世界にも風呂の文化があって良かった。


俺は話し合いの後、案内されていた風呂にはいった。風呂場は広く、とても豪華だ。


「スキルってどんなのがあるんだろう」


明日自分のスキルが分かる。それによって待遇が変わることはないよな?。もしそういうことがあるならどういうスキルがいいんだ?


やはり戦闘系か?それとも回復系?さっぱりわからない。


まあ、明日のことは明日に決めよう



俺の部屋はオタクどもと一緒になった。おれ自身コミュ障だし、一人のほうが好きだからどうでもいいけど。


オタクどもは何やら明日の作戦会議をしている。


「我のスキルは禁忌に触れるものだ!だから隠さなきゃならん」

「それでおいら達は追い出されてハーレム形成」

「うむ、実に素晴らしい」


などと言ってた気がする。


俺は正直どうでもいい(というかよくわからない)ので、明日に備え早めに寝ることにした。








翌日、俺は日課のランニングをするために外を出た。黙って外に出て面倒が起きるのが嫌なので、しっかり兵士に伝えている。(王宮外の移動は認められなかった)


「はっ、はっ、はっ、はっ」


王宮の周りを走る。そろそろ切り上げようとある角を曲がった時誰かとぶつかってしまった。


「あ、すまん」

「いえ、こちらこそって俊君!?どうしてこんなに朝早い時間に!?」

「えっと、日課のランニング.....宮崎さんは?」

「私も日課」



さっき名前が出たついでにいうと俺の名前は天神俊てんじんしゅん。そして彼女の名前は宮崎桐乃。確か学校の三大美少女とかいう変なやつの一人だった気がする。


「まさか俊君もランーーー

「あ!桐乃ちゃん、こんなところにいた。探したよー」

「.....?俊がなんでいるの?」


宮崎を探してやってきたのは佐藤茜と松野雫だ。ちなみに雫とは幼なじみ。どちらもさっきの三大美少女の一人だ。


「ごめんごめん、日課のランニングをと思って。俊君はさっきばったりと」

「そうなんだ~でも俊君が毎朝走ってるなんていがいだね」

「そうかな?」


まあ、自分では絶対に言わないし、知ってるのだって雫くらいだ。


「おお、ここにおったか。すまんお前達、部屋に戻ってくれないか?スキルがわからない内に下手なことをすると危険だから戻させろって指令があったんだ」


外出を許可してくれた兵士が俺達を呼びに来てくれた。


「はい、わかりました」


俺達は一度自分の部屋に戻った。俺は汗をかいていたので、一度シャワーを浴びにいった。


俺が部屋に戻るとオタク達が目を覚ましていた。


「あれ?天神さんはどちらにいっておられたのだ?」

「ちょっと走りに、でも部屋に戻るように言われたけどな」

「そうであったか」


会話が終わる。俺って本当にコミュ障だな。


気まずい雰囲気がしばらく続いたが、ノックする音でそれが破られた。


「朝食の準備ができました」

「あ、ありがとうございます。ちなみに、今何時か分かりますか?」

「今は8時です」

「分かりました。ありがとうございます」


8時か、だいたい1時間くらいランニングしてだから7時くらいに起きたのか。ちょっと寝過ぎてたみたいだな。







朝食を食べ終えた俺はある部屋に集められた。


「は~い、ここでスキルの確認をしま~す。今から水晶に一人ずつ手をあててもらいます。そうすると、ステータスプレートがご自身だけに見えるようになりますのでそのスキルをお教えください」


水晶を持った綺麗なお姉さんが説明をする。


まず、最初に田島が行った。


田島が水晶に触れると水晶が光った。


「えーっと、僕のスキルは『勇者』?」

「えっ!?」


「おい、祐介のやつ勇者だってよ」

「ほんとだね、さすがだね」


お姉さんは驚き慌てている。クラスメイトも驚き、感嘆している。


「え~っと、と、取り敢えず一回みんなしてみましょうか」


その後は『名工士』『剣星』『弓星』『錬金術』といった強いスキルがでてくる。


ちなみに剣星と星でかかれているが段階的にいうと


聖→星→鬼→術→見習士の順であるそうだ。


しかも、スキルにはランクがあって上から


神話能力《ゴッドスキル》、究極能力《アルティメットスキル》、特級能力《スペシャルスキル》、上位能力《ハイパースキル》、下位能力ノーマルスキル


って感じだ。


ちなみに『勇者』のスキルは究極能力だ。


田島のほかにも新、宮崎さん、佐藤さん、雫が究極能力だった。


田島祐介 『勇者』 


限界突破、火事場の馬鹿力といった自身に付与するものが多くそれらすべてが桁違いに強い。また、光属性の魔法が使える。


新蓮 『炎剛』


炎を操るにあたっての最上位のスキル。究極能力『炎の賢者』と比べると近距離が強い。


宮崎桐乃 『剣聖』


剣を使ったスキルの最上位。また、剣にすべての属性を付与できる。


佐藤茜 『天使の祝福』


ヒーラーとしての最上位のスキル。死者蘇生はできないが、死んでいなければ回復できる。


松野雫 『隠密』


影移動といった隠密系の最上位スキル。分身を一体作れて、連絡を取り合うことができる。



と、究極能力所持者はこんな感じだ。


そして、最後俺の番となった。


「では、水晶に触れてください」


俺はゆっくりと水晶の上に手をのせた。


が、今まで触れると光っていた水晶は俺の時だけ全く反応しなかった。


何かの不具合かと思ってステータスを開けてみた。


「え?」


ステータスは見れたのだが、スキル欄に何も書かれていない。


「えっと、これは?」

「た、多分スキルを持っておられないのでしょう。そ、その、すいません」


そうかスキルを持ってないのか....まあいいか。どうせあったとしても戦いに行かされりしただろうから結果としては良かったんじゃないか?


「べつに大丈夫です」


俺はそう言うと後ろに下がった。












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