あなたに心の花束を。

 ある一軒の花屋を巡って展開される群像劇的作品。主人公は章ごとに異なるが、その全員が、この花屋の花を必要としている。何故ならこの花屋が大事にしているのは、人の心に寄りそう花束を作ることだからだ。
 ある主人公は生きることに疲れていた。しかしそんな彼女に、花屋は花とは捉えられないような物を販売する。しかしこれがきっかけとなり、主人公は生きることに前向きになり、花屋に手作りお菓子を持って来るようになる。
 ある主人公は女子高校生で、花を意中の男子に贈った後、SNSで「イケメン花屋」として紹介したことから、この花屋は連日賑わうようになる。 
 またある主人公は母娘問題で悩む女性、またある主人公は夫婦間で問題があった男性、またある主人公は……、と花と人間関係が組み合わせで物語は進んで行く。
 実はイケメン花屋とされたこの花屋は、女性一人とイケメン男性二人で経営していた。そして、この花屋の三人には、それぞれ大切な人を失った過去があった。それでも三人は、花を通じて人々と関わる中で前向きに生きている。
 果たして、三人の想いの行く先は——?

 その花束が、人々の背中を押していく。
 その花言葉が、人々の代弁をしてくれる。

 人が人を思うことは、こんなにも素晴らしい。
 読んで損のない素敵な物語です。

 是非、是非、御一読下さい。

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