なでしこ姫は恋を呼ぶらしい~不思議すぎて困ります!~

命仙

第1話 なでしこ姫のご来校


「おはよう光希!」

「あ、おはよう大河!」



席に座り英単語の勉強をしていた俺、市浦光希しうらこうきに話しかけたのは、俺の前の席の矢野大河やのたいがだった。



「お前、相変わらず勉強熱心だな」


「だって、今日テストだぜ?」


「嘘だろ?!」



大河は2年6組のリーダー的存在で、馬鹿だがイケメンで明るい為女子からの人気は高い。


俺は縁の下の力持ちのような存在で、実はクラスの盛り上げ役。気さくな人柄で、友達も多い。



「どうしよ、また先生に怒られる...」


「もう大丈夫だろ、先生も呆れてるぜ」



慌てる大河に、俺は笑いながらそう言った。野球部の練習がキツくてすっかり忘れてたのだろう、と光希は推測した。ここ、北見原中学はスポーツの強豪校だ。

もちろん、俺の所属するバトミントン部も練習はキツい。



「ほら、お前ら席につけ!」



チャイムがなり、先生が教室に入ってきた。

パネルの電源が付きホームルームが始まった。



「今日は転校生がいるぞ、入ってこい」



その瞬間、転校生だって、とクラスが騒がしくなる。女子はイケメンだったらいいな〜と、男子は女子ならいいなーと期待に胸を膨らませた。


転校生が扉を開けて入ってきた。長い黒髪に白い肌。そしてさくらんぼのような赤い髪飾り。



(美人だな...)


「はじめまして。カナダから来ました、一条撫子いちじょうなでしこです。よろしくお願いします」


「じゃあ、席は矢野の隣な」



挨拶をすると転校生はニッコリと笑い、大河の隣の席に着いた。



「じゃあ、1時間目は国語だな。準備しとけ〜」



先生はそう言って職員室へ行ってしまった。



「俺矢野大河!よろしくな」


「よろしくね!」


「あの!わ、私小林夏美!よろしくね!」


「よろしく!」



クラスメイト達はどんどん転校生の...一条さんに自己紹介をする。俺もしたいが、人が邪魔で話しかけられない。


隙間から見える一条さんはとても綺麗だった。みんなの挨拶に笑顔で返し、声も可愛い。

よく分からないが、ふわふわしている雰囲気だけど明るい...みんなを見守る太陽の様だった。


授業が始まっても僕は後ろから一条さんを見ていた。しばらくすると、俺の腕は動き出す。一条さんの目や鼻の特徴をメモに書き込んでいく。髪もシャッ、シャッ、と黒く塗りつぶし、影をつける。



「おい市浦、何してるんだ!」


(何やってんだ俺、恥ずすぎだろ...)



俺は慌ててメモ帳を机に突っ込み、タブレット端末を開いた。


結局、俺は授業が終わるまで一条さんを見ていた。隣の席の女子から変な目で見られた。



「おい光希〜!撫子ちゃんばっか見てないで体育館行こうぜ〜!」



大河に声をかけられた。俺は慌てて机から体育の実技書を取り出す。



「あっ!」


「...? なにかしらこれ」



さっきの授業中に書いていた一条さんの似顔絵メモが落ち、一条さんの目の前に落ちた。



「わぁ素敵! 貴方は絵が上手なのね、凄い!」



一条さんはメモを見ると、笑顔になって俺を褒めた。



「あ、ありがとう一条さん」


「撫子でいいって、それより早く体育館行かないとね!」



そう言って、一条さん...いや、撫子は俺のメモを持ってクラスの女子と体育館へ行ってしまった。

顔が真っ赤になっているだろう俺は、案の定大河にいじられた。

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