第39話 最悪
(アリシア視点)
金属同士がぶつかり合う音が響いている。そして地面には肉片や血が至る所で散乱している。戦争は徐々に激しさを増していった。魔術が飛び交い、周辺を悲鳴で埋め尽くす。
シン様が言っていた言葉を借りるなら、まさに地獄絵図と言えるでしょう。この光景を見ると、するべきでは無かったと、後悔の念が出るがそれでもやるしかない。これは私にとってのある種のけじめみたいなものですから。
「進めーー!!攻めるのだーー!!」
戦況は今の所こちらが有利。でも何でしょうか、この嫌な予感は……
「アリシア様、二番隊、三番隊共に皇国軍の軍勢を撃破いたしました。このまま攻めようと思いますが、いかがいたしましょう?」
「……攻めるのは一番隊が突破した時です。その時まで少しずつ前進を」
「了解しました」
私はこのまま攻めるのは何か良くないと思い、一旦止まらせる決断をしました。
しかしそれがこの戦争の中で一番の英断だったとわかるのは直ぐでした。
***
それが起きたのは一番隊が突破した瞬間でした。
ドゴオオォォォ!!!
二番隊と三番隊の前で突然大きな爆発音が聞こえ、そちらに目を向けるとそこにいたのは信じられないものでした。
───
それも、前に報告にあったのと同じようなものでした。
「総員、退避!!」
奴らが現れたことで戦況は一瞬で変わってしまいました。よく見ると、近くには人間の姿がありました。どうやら奴らを使役しているようです。しかし、あんなものをどうやって……
「アリシア様」
「どうされました?モルル」
「我ら第二兵団に彼奴らを任せてはもらえないかと」
「しかし……」
「我らであれば問題ありません」
「許可なりません」
「っ!?なぜですか!?彼奴らを野放しにしておけば、この先危険です!」
「あなた方第二兵団のみでの強襲は許可できません。第一兵団と分担を」
「……っ、了解しました」
そう言ってモルルは自分の兵団員を連れて
「ガイル」
「はっ。行くぞ!!」
「「「「「はっ!!!」」」」」
その声と共に第一兵団も第二兵団に続いて行きました。
そして戦闘は苛烈を極めました。数体の
攻められているためか、少しずつ兵士たちの士気が下がってきています。
しかし、二番隊と三番隊が潰れなかったのは行幸でした。この二つの隊が壊滅したら今よりもさらに危ない状態になっていました。
「一番隊!皇国軍の小隊を撃破しましたが、増援が来てしまいました!」
「第四兵団、第五兵団は皇国軍の小隊を殲滅した後、皇国軍本隊への突撃を命じます」
「「「「「はっ!!」」」」」
先程から嫌な予感が消えない……
「ここは私も……」
「いけません。魔王である貴方様が出たらそれは自殺行為に等しいです。この場で待機していただきますよう」
「……そうですね。迂闊でした」
ギガス公爵が私にそう告げました。
確かに彼にそう言われなければ私は無駄死にしていたでしょう。しかしこの不安は払拭したのは紛れもない事実で。
(時使い、“過去視”)
私のアビリティ、時使いのスキルの一つ、過去視を使いました。
これは私が生まれながら持っていた“識別眼”で、見えない物──この場合は過去の出来事を指す──を指定し、アビリティで時間を操ることで過去の出来事を見ることができます。しかしそれも三日が限界で、頭にかなりの負荷が掛かってしまいます。しかし、今はこれを使うべきだとそう私の勘が告げていました。
(──っ!?これは……)
成程……これは少しプランを変えた方がいいかもしれませんね……
***
(シン視点)
僕たちは急いで戦場へと向かう。何でも、前に戦った
「いいか、我々は到着後直ぐに単独行動を開始する。各々皇国軍を撃破せよ!!」
「「「「はっ!!」」」」
「団長たちは?」
「バララは一応アリシア様の護衛を頼む。イリスは
「分かった」
「イリスもそれでいい?」
「ええ、分かったわ」
のちの歴史に刻まれる史上最大の大虐殺である、“クラウディアの悲劇”と呼ばれる悪夢はもう間も無く始まろうとしていた。
それも、かつてクラウディア皇国を救ってきた大英雄の手によって。
三度目の人生、悪魔と一緒に異世界計画 赤眼黒目 @acame
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