第38話 妖刀  

「『刃を燃やせ、刃を燃やせ。赤く、紅く、赫く、刃を燃やして赫く染め上げろ。真名解放──妖刀、赫月かくづき』」


 詠唱を終え、僕の刀は真っ赤に染まった。この力は僕のアビリティの力も含まれている。


「これが前に団長が言っていたやつですか?」


「そうだよ、バララ。これが僕専用の武器だよ」


「へえ、凄いわ。燃え上がってるみたい」


「ありがとう、イリス。そうだね、実際刀身は燃えているんだけど、それを内包してるからね」


 真名解放第一段階目、妖刀・赫月かくづき。刀を振ることで内包している熱を外に放出する。そしてその熱は無くなる事がない。但し、発動時に魔力を大量に喰らう。まあ、僕の場合は問題ないけどね。他の人──例えばイリスとかはすぐに魔力切れになる。だから妖刀。


「いくぞ。煉界れんかい


 僕は敵に向けて剣を振った。そしてそれが飛ぶ斬撃となって向かっていく。

 赫くなったそれは真っ直ぐ飛んでいき、


「「「……は?」」」


 そして徐々に壁が消えていき、次に見えたのは壊滅しかけている兵士たちの姿だった。残っている兵士は精々2割が良いところだろう。

 思った以上の性能だった。


「よ、よし!残りの残党を殲滅せよ!!」


「「「「「は、はっ!!」」」」」


 そこからはあっさりと終わった。アリシアから進軍してきたものは全員殺すよう言われていたので、丁度良かった。

 僕も赫月で次々と殺していった。そしてクラウディア皇国軍が全滅するまでそんなに時間はかからなかった。



 ***



「なんというか……あっさりと終わったね」


「そうだね……ていうか、こんなに強くした覚えないんだけど……」


「元々の刀の性能が良かったんじゃない?」


「イリス……そうだね。これは、ガンゼムさんに感謝だね」


 本当にこの刀を作ってくれたガンゼムさんには今後頭が上がらないかもね。凄いや。


「団長、死体、どうする?」


「ん?ああ、ちょっと待ってて」


 ここで二つ目の真名を解放しようかな。これだけはあまり戦闘向けで作った魔術じゃないし。でも、使い方次第でこれもやばいもんになるからなあ。よし、やるか。


「『刃よ鎮め、刃よ鎮め。沈め、静め、鎮め、深く鎮んだその先へ我を誘え。

 真名解放──妖刀、鎮月』」


 真名を解放した瞬間、今度は刀身が緑に変わった。

 真名解放第二段階目、妖刀・鎮月しんげつ。指定した場所や物を全てを吸い取る。それは、隠された物でさえ、何もかも。但し、生きているものは指定できない。また、吸収したものをエネルギーにして指定した人や物を治すことができる。また、これも魔力を大量に喰らう。


深淵しんえん


 一言そう呟くと、周りの死体が塵となり、妖刀・鎮月しんげつに吸い込まれていく。そして周りの死体は綺麗さっぱり無くなった。


癒しの楽園アヴァロン


 僕はまた一言そう呟くと、自分の団員たちを回復させた。


「凄い……」


「高火力な上にここまでの回復力とは……」


「団長やば。さすがっすわ」


 団員が回復したようだし、ここに数人万が一のための見張りを置いて、進軍の手伝いをしなければ。

 それにもまだ出してないし。一回出して火力とかのデータが欲しい。すぐにアリシアに終わった旨を伝えて、合流しなきゃ。


 その後、僕は数人の団員と、彼らがいつでも帰れるように設置型転移魔術を置いといた。まあ、彼ら以外には反応しないようにしといたから恐らくクラウディア軍の兵士でも使えないだろう。


 そして僕らはアリシアたちが攻めているであろう戦場へと向かった。



 ***



「なるほど。それではこちらに合流してください。いえ、まあ来たとしても恐らくですが後始末を頼むかも知れませんがよろしいですか?……そうですか。分かりました。ではそちらに数人万が一の為の監視役を置いておいてください。よろしくお願いします。ではまた」


「アリシア様、シンはなんと」


「既に片付けたそうです。敵軍は全滅。生存者無し。詳しい話はここに来てからするそうです」


「……こんな早い時間で全滅ですか。凄いですね」


「ええ。ですが、恐らく他の魔王が黙っていません。20兵士をたった一兵団で全滅させたのですから」


「それは……」


「まあ、それは全て終わらせてから対策を考えましょうか」


「そうですね」


 今アリシア達がいるのは、クラウディア皇国に隣接する平原。そこに約3万の兵士を駐留させている。

 対するクラウディア皇国軍はアリシア達よりも多い約10万の兵士を対抗するように置いている。


「シン達第三兵団が来る前に始めてしまいましょうか。もう彼方は進軍を開始しているようですし。ゴーレイン、始めてください」


「了解しました。魔術部隊!詠唱用意!」


 ゴーレインの号令により、魔術部隊が詠唱を始める。


「放て!」


 その一言で、数多の魔術が皇国軍へと向かっていく。しかし、皇国軍にあまりダメージが入らなかった。それは、一際大きい防御結界が貼られたからだ。


「なるほど、やはり情報通りですね。アリシア様、どうされますか」


「ガイル第一兵団長、使用を許可します。あの防御魔術を破壊しなさい。各兵士に告げる。総員、あの防御魔術が破壊された瞬間、突撃せよ」


「「「「「「「「はっ!!!!!」」」」」」」」


 アリシアの命令通り、ガイルが前に出て一振りの剣を出す。


「“解放”」


 その瞬間、その剣から膨大な魔力が溢れ出した。


龍の雄叫びドラグーン!!」


 その言葉と共に、彼は剣を振り下ろした。

 それはまるで龍の様に、雄叫びを上げながら、皇国軍にある防御魔術を破壊し、周りの兵士を道連れにその姿を消した。


「全軍、突撃!!」


 そして、アリシア達、クラウス魔王国軍は進軍を始めたのだった。


────────────────────────────────────


最近ちょっと忙しくて次の更新が金曜日とかになりそうです。

申し訳ございません

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