6話
「雨止まないね」
私は窓に手を当てながら外の景色を見ていた。
「この様子だと今日はずっと降っているかもしれませんね」
アンナが紅茶を用意しながら言った。
「そっか、残念」
私はアンナが用意してくれた紅茶を飲むためにソファに座った。子供の私が飲めるようなあまーいミルクティー、私はティーカップを鼻に近づけて香りを楽しんでから口にした。
「今日は何して遊ぼうかなぁ」
私は地につかない足をゆらゆらとしながら、紅茶と一緒に準備されたクッキーに手を伸ばした。
「そうですね、今日は遊ぶのではなくてお勉強をしませんか?」
アンナは名案だと言わんばかりに手を叩いた。
ここまできて勉強か、何て思ったがここの字を読めないのはまずい
「うーん、字が読めるようになりたいからお勉強する」
私がそう言うとアンナは本や紙、羽ペンを用意し始めた。
アンナがゆっくりと文字を書いて読み方を教えてくれた。見たことのない文字ではあったが、アンナの教え方が上手で分かりやすかったため、一週間ほどで読み書きができるようになった。
「今日は天気がとてもいいですね」
アンナがカーテンを開けている。
「今日はお外じゃなくて書庫に行くの」
私はウキウキとしながら自室を出てある場所へ向かった。
「アリシア、あーそーぼ」
アリシアの部屋に行きノックをした。
ドアが半分だけ開いたが、アリシアは顔を見せてはくれなかった。
「どうしたの?具合悪い?」
私が心配していると、アリシアが少しだけ顔を見せてくれた。目には涙を溜めていた。
「アリシア、どうして泣いてるの?」
私はオロオロとしているとアリシアが口を開いた。
「最近、パトリシアお姉さまが遊んでくれなかったから、私、嫌われちゃったのかと思って」
ボロボロと涙をこぼしながら下唇を噛んでいた。
私は半分しか開いていないドアを勢いよく開き、アリシアを抱き締めた。
「ごめんねアリシア、嫌いになってなんかないよ」
背中を擦りあやしているとアリシアが顔を上げた。
「では、どうして私のところに来てくださらなかったのですか?」
目元を赤くしながら私の目を見つめてくる。
「あのね、お勉強してたの」
私は少し恥ずかしかったため目をそらした。
「アリシアに本を読んであげようと思ってね、本当はお勉強してることは内緒でね」
だって、勉強して読めるようになったなんてカッコ悪いからね。
「そんな、私のため」
アリシアの顔がみるみると赤くなっていった。
「ごめんね、心配させて」
私はアリシアの頭を撫でた、さらさらと柔らかい髪、羨ましい。
「いえ、私こそごめんなさい」
アリシアが深々と頭を下げた。
「これから書庫へ行こっか」
私は手を差し出した。アリシアはキョトンとしているので、無理やり右手を掴み手を繋いだ。
「アリシアはどんなお話が好き?」
「えっと、動物さんがいっぱい出てくるお話が好きです」
「今日は私が、アリシアの好きなお話を読んであげるからね」
それから書庫に着いた私達はお昼ご飯の時間も忘れずっと本を読んでいた。私達を心配して探しに来た両親が見たときには、私達は仲良く寝ていたそうだ。
悪女だった私は善人になることにしました。 @alicemare
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