第11話 約束の日まで

 私達は、最後にお互いの連絡先を削除し、6年後再会の約束をした。

伊山君には、もし、違う出逢いがあったら、迷わず私を忘れて欲しいと言った。彼は少しムッとして、

「以前も言ったよね、もっと自分を大切にって、僕は待ってるよ紗奈さんを。」そう言い残し、私達は別れた。


 グループ展は大盛況で、終わった。美術雑誌にも取り上げられ、伊山君達は若手創作グループとして注目され始めた。

アトリエも広い場所に移したと雑誌でみた。

国近さんは、美人日本画家としてテレビでも取り上げられ、多方面でも活躍していた。


 私はきちんとフラワーデザインの勉強を始めるべく専門学校へ通うことにした。

 主人とも向き合って、今後話し合った。お互い結婚生活継続は難しいという意見は一致した。話し合いの結果息子が二十歳になるまでは、一緒に家族でいることを約束した。その間に夫は確固たる地位を固めるらしい。

 

 6年の月日が過ぎた。息子は無事第一志望に大学に入学し、家を出た。私達の離婚についてはすんなり受け入れてくれた 。

 主人との最後の6年間は息子を支える同士として過ごすことができ、とても楽しい日々だった。

 離婚後、元旦那は、不倫関係だった彼女と出来ちゃった再婚し、今はとても幸せそうだ。

 伊山君は雑誌などに新鋭アーティストとして、取り上げられている。

 私はフラワーデザイナーとして一歩を踏み出し、少しずつだが依頼が来るようなってきた。

 そして、今日8月26日伊山君と約束した日だ。

 私は足早に約束の場所に急いだ。彼は居るだろうか、違う幸せを見つけ、私を忘れただろうか。不安な気持ちで、歩いた。

 約束の場所は今もあった。昔のアトリエには、伊山と表札が書かれていた。恐る恐るドアを開けると奥から伊山君がやってきた。「お帰り」微笑む彼が立っていた。

 私は「ただいま」と言って抱きついた。これから6年分の話しをしよう。

 そして、これから沢山の時を一緒に過ごそう。

 



 

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イツカノ約束 panda de pon @pandadepon

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