バズーカ勇者

田村サブロウ

掌編小説

 魔道士パッチは不安を覚えていた。


 魔王を倒す旅路の途中で寄った修行所。ここで勇者は、ある特技の会得をめざして修行をしているのだ。


 問題は、勇者が特技の取得に参考資料として持っていったのが『ギャグ漫画』とかいうヘンテコな異世界の書物であること、この一点に尽きる。


 旅路の途中で勇者がこれを読んではニヤニヤ気味の悪い笑みを浮かべているのをパッチは何度も見てきた。イヤな予感しかしない。


「まさかアイツ、修行にかこつけてサボってるんじゃないだろうな……?」


 ポツリと、パッチが疑心の言葉をもらしたとき。


「失礼なこと言うなー!!」


 元気な一括が響いた直後、パッチを突然の大爆発が襲った!




 ――ドカーン!!


「ぎゃああぁぁぁぁぁ! な、なんだ!? 敵襲か!?」




 黒コゲになりながら、パッチは周囲を見渡す。


 というか、黒コゲなのに平然と身動きが取れるのも十分におかしい。


 その発想にパッチが届く前に、パッチに一人の男が近づいてきた。




「おっす、パッチ! 勇者ゼル、ただいま修行より戻ったぜ!」


「ゼル! まさか、さっきの爆発は君のしわざか?」


「ああ。オメーには一足先に新技を見せてやろうと思ってな」




 修行から戻ってきた勇者ゼルは、見た限りでは修行前と変わっていない。


 パッチは疑問を抱く。ゼルのいう修行とは、爆発魔法の習得か? いや、それなら修行前に『ギャグ漫画』とやらを持っていったことに説明がつかない。




「ゼル。オレに新技の矛先を向けたことはこの際、大目に見て許す。さっきの爆発はどうやってやったのか説明しろ」


「ああ。それはだな、この『ギャグ漫画』ではよくあるコトなんだが」


 ゼルは漫画を手に持って指差しながら続けた。


「ギャグ漫画のキャラはよく、なにもないところから重火器を取り出すことができるんだ。バズーカやらロケットランチャーやらガドリング砲やらミサイルやら」


「ば、ばず? ろけ? ゼル、一体なんのことだ?」


「今回の修行でオレさまはこのギャグ漫画の不思議特技と同じことができるようになった! その場のノリでいつでもバズーカをぶっ放せるぜ」


 パッチはゼルがなんの事を言ってるのかわからない。


 わからないが、全身をなぜか嫌な予感が覆っていた。


 やばい。なにか、とてつもなく厄介なことになろうとしてる。


 そんなパッチの心境などつゆしらず、空気を読まずに野盗が現れる。


「おっ、なかなかいい装備してるじゃないか。俺たちによこしな!」


「はい、どーん♡」


 ――ドカーン!!


「ぎゃああああ!!」


「とまあ、こんな具合に面白おかしい攻撃力があるから、今後の魔王退治に役立つこと間違いなしだぜ!」


 突然現れて突然倒された野党の泣き面をよそに、勇者ゼルはパッチに笑いかけたのだった。




 * * *




 数カ月後。


 勇者ゼルは北の大国で投獄されることになる。


 なんでもゼルはバズーカという名の重火器を、国の女王めがけてぶっ放したらしい。


 動機を聞かれたゼルは「軽いツッコミのつもりだった」とわけのわからないことをのたまわったそうな。


 黒こげになりながらもなぜか健康体でいた女王はたいそう怒り、不敬罪としてゼルに服従か死の二択をつきつけた。


 その後の勇者ゼルの資料は後世には残ってない。確かなのは、ゼルは残りの一生を女王の奴隷として過ごしたことだけだ。




 ちなみに魔道士パッチはその後、女王の側近としてそれはそれは裕福な余生を過ごしましたとさ。


 めでてぇ。

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