キス

「好きだよ、ハイネ」

「す、好きですよクライヴ……」

 私は今クライヴの部屋にあるソファで、クライヴの膝の上に乗せられている。

 休みだから、思う存分イチャついてしまおうという提案を断れなかったせいだ。

 好きだから、断れない。ここ最近休みが多いので、本当に休みなのかは疑ってしまうけど……。

 とにかく、そのせいでクライヴのにおい……香りに包まれている状態だ。

 なんか、独特な香り? 男性の香りなんてこんな間近で嗅いだことないから何にも分からないけど、頭がクラクラするのだけは分かる。

 クライヴにクラクラ。……これは前も言ったような気がする。でも本当なんだから、笑っている場合じゃない。

「どのくらい好き?」

「え、どのくらいって……」

 人を好きになることなんてないと思っていたから、そんな簡単そうな問いにもすぐには答えられなかった。

「僕はね、もうハイネだけがいればいいってくらい好きだよ」

 対するクライヴは、すぐにそんなことを言った。クライヴらしいといえばらしい答えに、笑うべきなのかなんなのか分からなかった。

「……ハイネは、他の人たちもいてほしい?」

 多分呆気に取られていたであろう私に、クライヴは問いかけてくる。

「まぁ、そうですね……せめてノワさんはいてほしいです」

「そうだね。ノワがいないと、この屋敷が回らないね」

「ですよね……」

 息がかかるくらいの距離なのでずっと首筋に息がかかっているのだが、それがくすぐったい。悪い気はしないのがちょっと不思議だった。これが好きのパワーみたいなものなんだろうか。

「……ハイネ、好きだよ」

「はい、私も」

「多分、この想いは僕の方が大きいと思う」

 真剣な顔で、そんなことを言う。それは、そうかもしれない。

「一生懸命、伝えていくからね」

 ぎゅっと、私を抱きしめる。手は冷たいのにその行動はとても温かくて、私は彼の手をぎゅっと握った。

「まず、キスで伝えていいかな?」

「き、キスですか!?」

 そりゃあ好きな相手とは、そういうこともするだろうとは思っていた。けれど実際する段階になると、戸惑ってしまう。く、口と口を合わせる行為だよね?

「ダメかな……?」

「ダメっていうか、恥ずかしくって……」

「じゃあ、いっぱいしよう」

「なんで!?」

 どうしてそうなるのかな!?

「そうしたら、恥ずかしいなんて気持ちはなくなるだろう?」

 名案のように言われたけれど、そんなことはなく全部恥ずかしいだけだと思う……と私は考えた。けれどクライヴは、準備万端とでも言いたげに顔を近づけてくる。

 か、顔が良すぎて直視出来ない……クライヴって、こんなにかっこよかったっけ? なんらかの魔法が使われている? そんなわけないよね……?

「今のうちにいくらかしておかないと、初めてが挙式でのキスになってしまうよ?」

「きょ、きょしき……!?」

 クライヴは一体、どこまで考えているんだ? なんだか怖くなってしまった私は、けれど、クライヴに好きという想いが少しでも伝わるのならと顔を近づけた。

 目は閉じている。

 唇は、この辺……?

「残念。そこは頬だよ」

 目を開けた瞬間に言われて、私は恥ずかしさで顔を背けそうになる。

 けれどクライヴはそんな私の顔を掴んで、唇と唇を合わせた。

「……んっ」

 はじめてのキスは、恥ずかしさですぐにクライヴの両胸を叩いてしまう。けれど彼は離れようとすることなく、私の唇にピッタリと唇を合わせたまま動かない。段々酸素が足りなくなってきたあたりで本気で彼の両胸を再び叩いて、解放してもらえた。

「……はぁっ、はぁ、も、クライヴ、ったら……」

「もう一回していい?」

「ダメに決まってるでしょう!?」

 愛が重い。

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キミがいなかった日々を思い出せない 城崎 @kaito8

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