第20話 ただいま
遂にやってきてしまいました。
今日は、魔王封印の力を強くする依頼のために英雄の墓所へ行きます。
「マルリ様、ご気分、そして体調はどうですか?」
「大丈夫です」
嘘です。すごく緊張してます。
すごく胃がキリキリしてます。
「では、出発しましょうか」
「はい」
いや、できることなら行きたくないです。
「では、テレポート!」
~英雄の墓所~
はい、来ちゃいました。
でもまだ、やめようと思えばやめられるはず…
きっとやめられるはず…。
そんなことを思いつつ国王について行き、気づけば封印されし場所の扉まで来ていて…
もうだめじゃん。手遅れじゃん!
ここまで来てやっぱムリですなんて言えないじゃん!
もうやだ!やめてよ…本当に…うわぁ。
「では、マルリ様開けますぞ。ここからはマルリ様だけで向かって下さい。名運を祈っておりますぞ」
「ありがとうございます」
扉が開けられると、とてつもない迫力が来ました。
聖なる気の中に邪気が混じっていて、なんとも言えない空間。
私のやる気を物凄く削いでいきます。
しかし、もう後戻りはできません。
私は一歩踏み出しました。
封印されし空間は、耳をすましてみると沢山の声が聞こえて来ました。
その声は、恐らく魔王の手によって亡くなってしまった人の声や魔王を最後まで守ろうとした魔物の声など様々なものでした。
少しでも気を抜いてしまえば乗っ取られてしまうかもしれません。
そして、遂に封印の前までやって来ました。
「これが封印…」
早速、封印の力を強めようと封印に魔力を通した瞬間。
気づけば私の意識は遠くへいっていました。
~???~
「う~ん?ここは?」
目が覚めるとそこは色々な花が咲き誇る野原でした。
「すごく、綺麗~」
よくみてみると、そこにある花はどれも見たことのない物でした。
ですが、どれも美しく綺麗なものです。
気づけば花に見惚れてしまっていました。
「マルリ!その花を見るのはやめなさい!」
花を見ていたら怒られてしまいました。
一体どうしたのでしょう?
「どうして?見ない方が良いのですか?」
声の聞こえた方をみると、そこには人が立っていて。
でも、とてもぼやけておりどんな顔をしているかは全くわかりません…。
ですが、とても整った顔をしているのだろう。そんなことを無意識に思ってしまいました。
「その花に見惚れてしまうとあなたは封印に取り込まれて現世へ戻れなくなってしまうの。さぁあっちに扉が見えるでしょう。そこへ向かって歩きなさい」
封印に取り込まれて現世に戻れなくなる…
それもなかなか良いものかも知れません。
「私、ずっとここにいたいです。戻ったって良いことはありませんから」
パチンッ
痛い。
「なにを言ってるのマルリ!あなたはブレディア商会の方。そして平民集いの皆さんにさようならも言わずにいなくなろうというの?平民としての生活は楽しくなかったの?」
平民…集い?
そうだ、私平民になってそれからの生活はとても楽しくて…。
「このままだと、皆とさようならしちゃうのよ!良いの?」
良くない…。
あれ?そういえば
「封印は?」
「封印はもう大丈夫。あなたがここに来たことによってだいぶ強化されたから…だから安心して帰りなさい」
そう…なんだ…。
「あなたは?あなたは一体誰なの?」
「ただの人間よ…」
「そうなんだ…」
「さぁ行きなさい!あなたの帰りを待つ人のもとへ」
言われた通り、私は扉に向かって歩く。
ただただ歩く。
そして、気づけば扉の前に来ていた。
「名前も知らないお方。ありがとう」
「どういたしまして。私はずっとあなたを見守っているから。安心して帰りなさい」
「はい」
こうして私は扉を開けた。
すると、また意識が遠のいていった。
~封印されし場所~
「う~ん、はっ!」
今何か夢を見ていたような…?
気のせいか?
「そういえばなんか邪気が減ってきてる…。封印の力強められたのかな?」
良くわからないけどうまくいったんだ!
良かった!ふぉんとに良かった~!
こうして、私は依頼を無事終わらせて英雄の墓所の前まで帰ってきました。
「おぉぉ!マルリ様!成功されましたか!よかったです。良かったですぞ!」
「上手くいってよかったです」
沢山の声。
上手くいって本当に良かった!
そのあと私たちは王宮に戻り、感謝祭が行われました。
そして、私はシュールト公爵に呼び出されました。
どんな話かは分かりますが…
「マルリ…今までお前には悪い事をした…本当に悪かったと思っている。マルリ、お前はすごい。どうか我が家へ帰ってくれないか?」
案の定、こんな話でしたよ。
まぁ答えは決まってますよ。
わたしはこの人のことを許しません。
「残念ですが、私はもう平民です。それにわたしを待っている人がいるので…それでは…」
本当はもっと酷いことをしても良いのかも知れません。
ですが、私はこれ以上の事をする気はありません。
私がざまぁな事をするなんて無理ですので。
シュールト公爵は拳を強く握りしめており物凄く何かを耐えていました。
ですが、流石に落ちぶれすぎてはないようで。
「分かった。もし暮らしに困ったらすぐに声をかけると良い」
「分かりました。それでは」
ギルドへ帰ると、皆さんがが笑顔でおかえりと言ってくれました。
本当に平民になれて良かった。
私は笑顔で皆さんにいいます。
「ただいま」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
どうも作者のおいどんべいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回の話を持って終わりとさせていただきます。
本当にありがとうございました!
帰ってこい?私が聖女の娘だからですか?残念ですが、私はもう平民ですので おいどんべい @kuppyman
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