第二哭「卒業アルバム」


 僕は卒業アルバムを求めて、熱海市の実家まではるばる帰ってきたのだ。仕事の都合で住んでいる、北海道の士別市とは違い、比較的暖かい気候だ。昔住んでいたの地元なのに、これほど暖かかったかなと、思ってしまった。

 先週中学校の同窓会が開かれ参加したのだ。無事同窓会は盛り上がって終わり、二次会と続き三次会も開かれたそうなのだが、三次会にはいかなかった。単純に酔いが回って眠くなったので帰らせてもらった。

 二次会の途中、クラス委員の山田が卒業アルバムに関係ない写真が入っているという話を持ち出し、オカルトの類は好きなので、興味が湧いたのだ。まあ帰って寝たらその話を忘れていた。数日前に電話がかかってきて、おじいちゃんの十回忌が近いので、母に帰ってい来いと言われ、思い出し今に至る。

 実家に到着すると、両親は「おかえり」と出迎えてくれた。荷物を取り敢えず茶の間に置き、卒業アルバムを探すついでに自室の掃除を始めた。しばらくして喉が渇いたので台所で茶を飲もうと下に降りると、二人共何処かに出かけていた。時計は夕方の5時を指していた。ふと耳を澄ますと豆腐屋のラッパが鳴り響いている。

 再び掃除を再開すると、机の裏に何かが落ちているのに気が付いた。それはすぐに噂の卒業アルバムだと気がついた。あぐらをかき、埃をふりはらい中を開ける。

 最初は座学の瞬間を写したページだ。どれも皆楽しそうにしたり、真面目に受けたりしている。――噂は本当だった。左端に夕日の差し込んでいる昇降口が写し出されている。

 気になって捲る。次のページは野外活動のページのようだ。目線を左下にもっていくとやはりあった。だがさきほどとは違い、夕日にてされた校門が写っている。

 捲る。プールの授業のページだ。またいつもの場所にあった。今度はいつも登下校に通っていた道の見覚えのある会社の建物が右に写っており、カメラは通学路をまっすぐにとらえていた。

 正直気味が悪い、それなのに好奇心が勝ってしまい、また次のページを見た。ここまで来たら、本来そのページが何のスペースなのか気にならなくなってしまい、ひたすら左下に意識をもっていった。通学路の踏み切りが写る。

 写真は家に近づいている、そう確信したのはその次のページだった。家の玄関が写っていた。

 また捲る。玄関の扉が開く音がした。どうか両親であってほしいと思った。

 二階へと続く階段が写される。階段の軋む音がした。徐々に音が大きくなる。まるで、こちらに近づくように。

 捲る。背後の扉が開く音がした。――僕の、背中が写っていた。

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夢哭き様のお通りだ 博士の異常な愛情 @touzui

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