黒い祝祭

@blanetnoir




愛する人に出会えたことで、死ぬまで私の人生は祝祭だと詩人はうたった。




その言葉と心の美しさに染み入りながら、

私はあの人のことを心に浮べる。





私にとって


あの人に出会えたことは、

あの人という存在は、




私の人生この先ずっと祝祭だっていえる人だ



そう思いながら、



あの人へ向かう感情が、私の心を黒塗りする。






まっさらな青く澄み渡った空の下で祝うような祝祭とは、

少し違う。






私はあの人に対して、

愛を覚えながら、感情を黒くも塗られる。



なぜなのか、

その理由は薄ら分かっている。




それは、




あの人が私自身の理想だから。



あの人のように私が生きたかったから。





もしも、

同級生にいたとしたら、きっと声もかけられないような高みの存在だから。





こんな形で

出会ったから愛せたのか

出会わなければ平和だったのか



推しとして

愛そうとしたから平和だったのか

近づかなければ平和だったのか




どんな形で

出会ったから黒く塗られずに愛せたのか



これは、本当に愛なのか。







あの人を巡る私の感情は


色んな色が綯い交ぜで、


混ざりきった絵の具が言い様なくて仕方なく「黒」と言わざるを得ない、


煮詰まってどろりとした質感で、


顔にかかれば、目も口も開けないほどに





私の顔に塗りたくったのは、

私に向かって手を伸ばしてきた、



あの人自身。






不用意に詰められた距離は、


人のバランスを容易く壊す。






見上げる距離のままでいてくれたなら、


私の空は青いまま


祝祭を祝えただろうに。







そう思いながら、


目を塞ぐほどにあなたの手から垂れる黒い絵の具を拭いながら、

目の前の貴方を見つめてしまう。





それでも愛しい人だと。






─黒い祝祭─

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