壊れてゆく日常2
結局、仕事が終わったのは23時を少し過ぎたところだった。
鈍く痛む腰に手を当てながら思い切り伸びをすると、パキパキと音が鳴った。
何時も通り会社のドアの鍵を閉め、車に乗り込みエンジンを掛けるとディスプレイには23:15の文字が浮かび上がる。
「仕事やめてぇなぁ」
そう呟きながらタバコを咥え火を点け、肺に届いた紫煙を吐き出しながらゆっくりと車を走らせる。
帰り道の途中でコンビニの駐車場に車を停めると時刻は23:50となっていた。
もう一度タバコに火を点けながら、スマートフォンを取り出し例のアプリを起動する。表示されている時刻は23:52となっていた。
そう言えば、俺の車の時計が遅れるんだよなぁ。
そんなことを考えながらアプリに表示される画面を一通り確認するが、今朝と全く変わりはないようだった。
さて、後7、8分で例のゲームが始まる予定のだが、正直なところhavokが言うプレイヤーキルを俺が出来るとは全く思えない。
喧嘩をしたこともなければ、誰かを殴ったこともない、疲れきった社畜の俺が他人の生命活動を停止させる?
冗談がキツすぎる。
そもそも、ごく一般的な日本人であれば他人を物理的に傷付ける様な真似はしてこなかったはずだろう。
それに、素人の俺が誰かに殴り掛かったとしても返り討ちに合う確率の方が高いだろう。
痛む腰、タバコに侵された肺、車に頼りきりで運動不足の中年ボディ。
勝てるとしても、良いところ中学生までだろうか。最近の中学生もガタイが良いのでもしかすると、やられる可能性もありそうだが。
はぁ、と溜め息を吐く。
それをどうにかするためのスキルだと思うのだが、俺が所持しているのはアイテムがない「Dragon Slayer IV 」と、跳躍と滑空が行える「Mighty bomb jack 」。
一体これで何をしろと言うのだろう。
まぁ、あそこに呼ばれた奴らのなかにはごく一般的な日本人に含まれないような、プレイヤーキル大好き日本人もいるかもしれない。
もし、そういう奴と出会ってしまった時には跳躍と滑空の効果が逃げる時には役に立つのかもしれない。
しれない、ばかりで情けなくなるが、生命活動を停止させられない様に気を付けておくことは大事だろう。
これからゲームが始まるのであれば、先ずは自分のスキルをある程度把握していくことにしよう。
アプリの針に目を落とすと、間もなく25時が始まろうとしていた。
ゲーマーたちの墓場 @yoll
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