夕日に照る君
なまけ猫
夕日に照る君
夢の中で、会ったことのない人が出て来ることがある。頻繁にあるわけではないが、今日の人は一味違った。まぶしいほど輝く笑顔を「まるで太陽のようだ」と表現することがあるが、まさにその表現の似合う、かわいらしい笑顔だ。ただ、それ以外については記憶があいまいではっきりとは思い出せない。
目覚ましが何度もなるのを止め、いつもより遅めの目覚めに少し焦る。
急いで準備すると、いつもと同じ時間に家を出ることができた。
歩いても歩いても、一向に学校が見えない。
「おかしいな。いつもならもう着いているころなのに」
違和感を覚え、きた道を振り返ったとき、同じ道をぐるぐると歩き回っていたのだ。
なぜそんなことに気付かなかったのか、疑問と焦りを覚え、学校へと足を進める。
おかしい。
また同じ道につく。何度も通った道なのに、間違っているのか?と言葉にしがたい気持ち悪さを感じた。
解決策がわからず、でたらめに進むことにした。ひとりでそこにとどまることは怖くてできなかった。
いつも右に曲がっていたところを左に曲がってみる。
学生服を着た男の子らしき人がいた。
立ち止まって何かしているようだが、よく見えない。そう思って見ていると、パンっ!とはじけるような音ともに、空間を覆う膜のようなものが消えた。
漫画でしか見たことのない光景が目の前に現れ、呆気に取られていた。
何か知っていそうな男の子に聞こうと思ったが、姿はなかった。
訳の分からないことに頭が混乱しているが、何も考えなくて済むように学校へ向かう。
今度は難なく学校へ到着。
転校生を紹介する、と担任の先生が言う。
扉を開けて入ってきたのは、今朝見た男の子だった。
自己紹介をし、先生の示した席に着席。休み時間も何人ものクラスメイトに囲まれており、今朝のことを聞けそうにない。
今日の授業がすべて終わり、彼をそれとなく呼び出し、屋上で話を聞く。
誰によるものか、目的も手段もわからないと彼は言う。
ただ、ある日突然、目の前に現れ、さわってみたら消えたのだと。
そう彼はいい、しゃがん見込んで何かを考えているようだった。
私も少し離れて座る。秋風に長い髪が揺れる。夕日に照らされ、向き直って言った。
「君だったんだね。」
【夢で会ったんだ。その時も今朝と同じように助けてくれた気がする。】
そういうと、彼は、人懐っこくてまぶしいほどの笑顔でかわいらしく笑って見せた。
夕日に照る君 なまけ猫 @ASUKA-MOFU2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます