第39話 いつもの彼らと俺とステータスちゃん


「お肉にお魚に可愛いあの子ッ! 参加しなきゃ損ってもんじゃないのよ、ねー、ドンショクちゃん?」


「美味しい食べ物と愛しいおれの君……シチュエーションは完璧じゃないか……」


「あとは大きいおっぱいの飲み放題があれば、ここは天国でウッサァッ! さあお姉さんッ! 卑しいオイラを受け止めてウッサァッ!!!」


「「「カールさんこいつらをつまみ出してください」」」


「あいよ。やれ」


「「「アイル・ビー・バァァァックッ!!!」」」


 招待した覚えもない変態三銃士にはお帰りいただいた。うん。変態が一緒だと飯が不味くなりそうだしな。


「お前が言うな」


「いったァッ!?」


 またハリセンでケツをしばかれた、やめてよ俺のケツしばかれ過ぎてマジで切れ痔になっちゃったんだから、優しくして、お願い……。


「きゅぅぅぅ?」


 俺は自分にできうる精一杯の可愛い声とつぶらな瞳、そして両手を合わせてお願いのポーズを取った、フッ、これなら断れまい。


「……………………」


「待て少年。どうして無言無表情で包丁を構えているんだ、落ち着け、話し合おう、俺達は解り合える」


「……相山はショータローきゅんに任せて、わたし達はご飯にしましょうか小娘」


「……そうねおばさん。あっ、ショータロー。思いっきりやっちゃって。さっきの変態、見てたあたしでもムカついたから」


「任せて……久しぶりに本気の殺意が湧いたから」


「マジすんませんッしたァァァッ!!! アフンッ!?」


 土下座した俺のケツにクソガキは容赦なく包丁を刺しやがった、やだこれ切れ痔のとこじゃない、すっごく良く響くわ、痛みが、脳天まで、キャ!


「……とりあえず、俺にも飯食わせて」


「なんでケツに包丁が刺さってんのに平気なんだよ?」


「相山の生体なんか気にしても時間の無駄ですよ、バーベキューにしましょう」


 やがてステータスちゃんが熱せられた網の上にお肉や野菜、お魚を置いていく。網の下にある炭火で加熱されたそれらは徐々に色が変わっていき、ひっくり返してみると焦げ目なんか見える。


 お肉自身から湯気が立ち上っていて、それを見た俺の腹は、ぐ~、っと鳴った。そろそろ食べ頃だな。っとその前に乾杯だ。俺達は思い思いに紙コップに入ったドリンクを手にする。


「……では。この場を開いてくれたカールのおっさんに感謝と、この前の騒動の収拾を労って……」

 

「「「かんぱ~いッ!!!」」」


「「「いよっしゃぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」」」


 乾杯の直後。目の色を変えた俺とステータスちゃんとドンショクちゃんによって、網の上のお肉の奪い合いとなった、邪魔すんなこのクソアマ共、この肉は俺んだァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!


「いーえ、わたしのですッ! 相山と小娘はいつものもやしでも食べてれば良いじゃないですかッ!!!」


「違うわあたしのだっつってんのよッ! あたしだって、いい加減ゲロってばっかじゃなくて美味しいもん食べたいのよッ! 邪魔すんなッ!!!」


「邪魔してんのはそっちだろうがッ! ペッペッ! へーん、俺のツバつけちゃうもんねーッ!!!」


「ああああッ! わたしが狙ってたカルビがァァァッ! 土下座しろこのロリコンがァァァッ!!!」


「隙ありッ! こっちの骨付き肉は頂きよッ! あー、美味し……」


「……おい。その骨付き肉、まだ半なまじゃねーか」


「オエエエエエエエェェェ……」


「……ホンット、ロクでなししかいねーな、ここ」


 他のコンロで焼けたやつを一人で楽しみながら、ショータロー君が冷めた目でこちらを見ていた、おいその肉を寄越せクソガキ。


「やなこった」


「これ以上奥はらめなのぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」


 それを奪いに行ったらサッとかわされて、俺のケツの包丁を更に奥深くへとねじ込みやがった、あっ、刃先が奥に当たってる……。


「……でも。わたしが帰ってきたのは、それだけじゃないんですよ……」


 ステータスちゃんが何かを呟いているが、俺はそれどころじゃない。奥の敏感なイケナイ部分に尖った包丁の先っぽがツンツンしてて……。


「……貴方はあのセトケンと相対した時も、わたしを呼ばずに自分で何とかしようとしていましたよね。自らの足で立とうとするその心があったから……」


 いや、何か、何か来ちゃう……ッ。


「それが解ったから……わたしはまだ必要ないんだって、みんなはまだ大丈夫だって思えて……それを示してくれた貴方の元に帰ろうって……そう思ったんです……」


 こ、これ以上は壊れちゃうッ! らめ、らめぇぇぇ……ッ! 俺、馬鹿になっちゃうよぉぉぉ……ッ!!!


「……フンッ!」


「        」


 すると、何か言っていたステータスちゃんが俺のケツの包丁に蹴りを入れ、包丁の全てが俺のケツの中に収納される。その衝撃で、俺は白目を剥いた。


「……人が真面目な話をしているというのに、この相山は……」


「ねえ大丈夫なのこれ? ハヤトさん、ガニ股で両手を上に上げた潰れたカエルみたいなボーズで、立ったまま気絶してるんだけど……」


「うわ、何こいつキモ……おばさん、コイツ生きてんの?」


「HPが残っているのでまだ死んではいませんよ。相山、いつまでキモイ格好で止まってるんですか、戻ってきなさい」


「全部テメーの所為だろうがゴルァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


 意識が戻った俺は、ステータスちゃんに食ってかかった、許さんぞこのクソアマ。


「……まあ、それはともかく。相山」


 何がそれはともかくなんだよ、テメー、久しぶりに俺の右ストレートの餌食にして……。


「……………………」


「……ん? 今、なんつったステータスちゃん?」


 すると、小声でステータスちゃんが何かをボソッと呟いた、なんだなんだ、そんな音量じゃ聞こえんぞ?


「……なんでもありませんよ、この変態ロリコン性犯罪者ッ!」


「そこに直れこのクソアマァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


 もう許さん。今までで一番良い笑顔で俺に向けられた言葉が変態ロリコン性犯罪者とか、誰が許すんだこんな暴挙。


「喰らえロリコン魂の右ストレートォォォッ!!!」


「いやぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!! 拳にツバがついてるゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!?」


「ぎゃぁぁぁあああああああああああああああああああああああッ!!! あたしについたァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


「いい加減にしろ、この駄目人間ども」


「「「あふひばァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?」」」


 結局、ショータロー君のハリセンが飛んで、俺達三人は成敗された。一人の子どもによって地面に無様に倒れ伏す、三人の大人。なんてザマだよ畜生、このショタ強すぎる……。


 色々と言いたいことはあるが……でも、ま。元の世界での生活に比べたら、こんな日々も悪くないかもな。変な奴しかいねーけど、それでも俺、頑張ってるからさ……。


 包丁が収納されたケツから溢れ出る痛みに堪えながら、仰向けに倒れている俺は空を仰いだ。その空は、とても青々としていて、綺麗だった。


 チラリ、と隣で倒れているステータスちゃんを見てみる。彼女もまた、空に負けないくらい綺麗な笑顔で、笑っていた。それを見た俺も、自然と笑顔になる。


 ふと、彼女と目が合った。そして、何故か俺に見えない角度でステータス画面が出される。おのれステータスちゃんめ、何の嫌がらせだ。


「……わたしは、貴方のステータスちゃんですッ!」


「……はいはい、ったく……」


 彼女はそう言った。それを見た俺も、仕方なく彼女に笑い返すのだった。


『氏名:相山ハヤト

 性別:男性

 年齢:二十八歳

 状態:葉っぱ隊(切れ痔)(New!!!)

 職業:ロリコン

 取得スキル:ステータスちゃん

 持ち物:五百万円の借金(ちょっと減った)

 備考:これからも、こんなわたしをよろしくお願いします(New!!!)』


 ――第一章、完。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界に転生してステータスを開いたらキェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!! 俺とステータスちゃんと行く土下座珍道中 沖田ねてる @okita_neteru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ