染まるな、自分

@kimi114514

第1話

先日、おれはフラれた。

一年ちょっとは続いたが、別れるときはあっけない。

「あなたといても、楽しく感じなくなった」そんなもので幕を閉じた。


振り返ると、思い当たる節もあった気がする。

他愛ない話をしている時も、笑うポイントはちょっとずれてた。

おれはコーヒーが好きだったが、「苦い」と言って彼女はあまり飲まなかった。

「飲みに行こう」と誘われても、酒がそこまで好きじゃないおれはよく渋ってたな。

煙草をおれは嗜んでいたが、彼女はよくは思っていなかったらしい。

そういうのが積み重なって、別れる結末を迎えたのだろう。


もちろん、別れるのはおれは嫌だった。必死に食い下がって、話し合って、結論「友達に戻ろう」といったところだ。

しかし、そう都合よくは進まない。

いつの日かSNSもブロックされ、彼女のことを見る日もなくなった。

ある日友人に、「あいつもう新しい男できてんだな」と言われた。


おれはあまり驚かなかった。薄々感づいてはいた。

「楽しくなくなった」というのは、誰かと比べてというのが大半だ。

おれはブロックされて見れないため、友人にSNSを見せてもらった。

新しい彼氏なる人物は、おれとはあまり似つかない。

見た感じ外見ちょっとチャラい?感じだし、酒の席で彼女が楽しそうにしている姿もそこにはあった。

おれの前ではあまり見せなかった姿だ。


どうすればおれを選び続けてもらえたのか。

いまさらそんなことを考え続けても仕方がないが、今でもふと考えてしまう。

彼女に好かれようと、お酒を頑張って飲んでみたり、禁煙したりもした。

だが、そのときは楽しく過ごせても、心の中でおれは思うのだ。

彼女に合わせている自分。お前はいったい誰だ、と。


人の色に染まり、選び続けられるのが正解なのか?

染まることなく、自分であり続けるのが正解なのか?

いまだその答えはわからないし、まず正答が存在するのかも不明だ。


そんなことをぼんやり思い返し、

おれは今日も紫煙をくゆらせ、コーヒーを啜る。

多少は酒にも慣れたが、やはりこれが一番だ。

今この時はこれでいいんじゃないかと、自分に許しを乞いながらも。

今日も考え、迷い続ける。


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