狙撃、狙撃、狙撃

月夜桜

狙撃

「ふぅ……」


 スナイパーライフルを的に向かって構え、息を整える。

 距離、風向き、風速を考慮し、狙いを付けていく。


「むぅ……」


 ゆっくりと銃爪を引き、射撃する。

 が、的の真ん中から右に外れ、ギリギリ及第点と言うべき場所に当たってしまう。


「……外した。」

「は、外したって……あなた、ファイブキロメーターレベルの狙撃スナイプで、観測手スカウター無しで的に当てるヒットさせること自体が凄いことって理解してる? しかも、今日はかなり風が強いわよ」

「してるよ。けど、シェリーはもっと上手いじゃないか」

「あなたねぇ……」


 ここは米国陸軍省によって作られた射撃演習場。

 通称エデン。

 そこに俺の他に背の小さい少女がいた。


「今ので──」

「20回目だな。次こそは真ん中に当てる。チャンバーを含めた上限21発、最後の1発は確実に当てる」

「当てられなかったら?」

「今日の昼飯、奢ってやるよ」

「Got it! (やった!)」


 コッキングをして次弾を装填してから再び構え、狙いを定めていく。


「すぅ~~はぁ~~……」


 風を感じる。音を感じる。

 そして、自分自身に暗示を掛ける。絶対に当てられる、と。

 人差し指をゆっくりと銃爪に掛け、ゆっくりと引いていく。

 照準がブレないように、呼吸を浅くし、慎重に引いていく。

 カチッ、という音と共に火薬が破裂。

 マズルフラッシュと同時に・・・・・・・・・・・・重く乾いた音が発生。

 鉛玉を的へと発射する。

 ライフリングに沿って回転が加えられた弾丸は、描いた軌道通りに風に流され、重力に引っ張られ、まるで磁石に引き寄せられるパチンコ玉のように綺麗に的のど真ん中へと吸い込まれる。

 高所から低所に向かって撃ったため、撃った弾丸は的を貫通し、地面へと砂埃を立てて墜落する。


「うーん、多分、真ん中に当たったと思うが……」

「Wow……本当にヒットしてるわ。賭けはワタシの負けね」

「ど真ん中を当てるのに21回も掛かったのか」

「21回でも凄いわよ。ま、お手本見せるとすれば──ちょっと貸してみなさい」


 手からライフルを奪われ立ったまま・・・・・構える彼女。

 因みに、俺は基本に則して地面に伏せた状態で射撃していた。

 それがどうか。こいつ、立ったまま狙い付け、躊躇いなく銃爪を引きやがった。

 確かに、訓練用に火薬の量を減らしてるとはいえ、かなりの衝撃がある。

 それを中学2年・・・・の少女が反動を受け流して普通に立ってやがる。

 つくづく思うが、バケモンだよな。まぁ、俺も人のことを言えんが。


「ふぅ、こんなものね」


 彼女が使っていた双眼鏡を使い、的を見る。

 ……うん。何事も無かったかのようにピンホールショットをしやがった。


「ピンホールショットじゃないわよ。ほんの少し、右にずれたわ」

「お前、目がいいとか言うレベルじゃねぇよ」

「Thanks~ (それ程でも~)」

「……もういいよ。それよりもそろそろ復帰するぞ」

「了解~」


 癖で薬莢を回収し、銃本体を分解、ライフルケースに収納する。


「ほんと、ジャパンアーミーは装備品を丁寧に扱うわね」

「それはお前らも同じだろ? 俺達は単純な話、予算が足りないから薬莢を使い回してるだけだ。よし、行くぞ」

「Roger. After me♪ (了解。ついてきて♪)」


 俺はとても機嫌のいいシェリーの後について行き、演習場に置いてきた幼馴染が頬を膨らませている姿を想像して苦笑するのであった。

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狙撃、狙撃、狙撃 月夜桜 @sakura_tuskiyo

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